【スーツ 裏地】快適な時間を買うための裏地選び。素材と場面での使い分け。のアイキャッチ画像
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【スーツ 裏地】快適な時間を買うための裏地選び。素材と場面での使い分け。

スーツは裏地によって、着心地や機能性がかなり変わるものです。既製品のスーツしか着たことがない方は、裏地はあまり着目していないポイントかもしれません。「そもそも裏地」ってなに?という方もいらっしゃるでしょう。裏地とは、スーツの裏面につけられた表面とは違う生地のこと。実は裏地はそもそものつけ方から、生地素材の種類、色柄までラインナップはさまざまです。スーツでオシャレを楽しんでいる人の中には、裏地に徹底的にこだわって個性的でオシャレなスーツスタイルを生み出している人もいますよ。表地と違って、ド派手な色柄をコッソリ仕込めるのも裏地の魅力。もちろん着用シーンは限られてしまいますが、周りと違う個性を演出するには裏地について知っておくことが必要不可欠です。そこで今回は、600万着以上のスーツを仕立て、裏地に関しても熟知した「オーダースーツSADA」のスタッフが、いくつか種類がある裏地の特徴と役割や、素材による違い、色柄の選び方といった裏地に関するごく基本的な部分を解説します。裏地は主にオーダーメイドでスーツを仕立てる際に着目するポイントでしょう。ぜひ、裏地の魅力を知ってオーダースーツにもチャレンジしてみてくださいね。

今回は、普段あまり目につかない裏地にスポットをあて、裏地による快適さの理由、種類と機能、色柄の選び方をご説明します。

裏地の種類と役割

  • 総裏・・・主に秋冬の仕様。
    ジャケットの内側、表生地の折り返しがある部分以外を、すべて裏地で覆ったタイプです。
    総裏で使用される裏地は、厚みがある綾織りが一般的です。裏地は着用中の湿気、シャツとの摩擦、汚れから生地を守ります。
    また、細かな縫製や付属物が破損することも防いでいます。
    裏地があることで袖通りが滑らかになり、ストレスの無い快適な着脱ができます。
    着用中も裏地が摩擦を軽減するため動きやすくなります。

     

    スーツの表生地に使われるウールは、湿気と摩擦に弱い素材です。
    この短所を裏地で補い快適性を上げています。

  • 背抜き・・・主に春夏・オールシーズン・合服の仕様。
    裏地が肩から肩甲骨までのタイプです。
    背中から腰回りの裏地が無く、表生地の縫製部分が見える仕様です。
    背抜きタイプは、背中心の縫製部分を保護する裏地が無いため、あらかじめ生地の縁にパイピングや、ほつれ防止処理がしてあります。
    比較的摩擦が少ない背面部分の裏地を省略することで、通気性が良くなります。
    そのため、涼しさ重視の春夏スーツは、この背抜き仕様が多くなります。
    背抜きで使用される裏地は平織がメインです。スーツの表生地がポリエステル100%など、吸湿性がない素材であれば裏地で湿気を吸い取る必要もないため、秋冬物でも背抜き仕様になっている場合があります。
    また、オールシーズンタイプ(厳密には真夏以外の3シーズン)もこの仕様が多く、春と秋に対応するために背抜き、冬はインナーで調節することを前提としています。

     

    合服(あいふく)は間着(あいぎ)ともいい、春や秋などの季節の変わり目に着用されるものです。
    こちらも背抜き仕様です。
    期間着用が短いため、空調設備の整った現代では、春夏物や秋冬物で合服シーズンを乗り切ってしまう方が大半です。
    しかし、四季のある日本だからこそ、シーズンの気温にピッタリ合う合服を使うのも粋な着こなしです。
    ライフスタイルにあわせて、時には合服をオーダーするというのも贅沢な楽しみ方です。

  • 半裏・・・盛夏用。
    肩回りをメインとした少量の裏地が特徴で、脇腹の裏地がなく涼しさを重視したタイプです。
    軽量の盛夏用によくみられる裏地仕様です。
    総裏や背抜きよりもカジュアルな印象になります。
    裏地には通気性の良い、メッシュなどが使用されます。
  • パンツの裏地・・・オールシーズン
    あまり注目されないパンツの裏地ですが、重要な役割があります。
    パンツで最も摩擦を感じる部分は膝です。
    歩行、階段、着席の際にスムーズに生地が移動するように膝周辺に裏地をつけます。
    パンツの前側半分にウエストから膝下まで裏地を入れると、充分な快適性が得られます。ポイント
    ジャケットの裾を内側から見ると、裏地が1センチ程度折り返されプレスされています。
    背中や袖の中も裏地に余裕があります。
    裏地の余裕は、縫製ミスではなく高度な技術によって意図的に作られたものです。
    この余裕がないと、着用感が悪くなってしまいます。

     

    裏地には表生地のウールほどのストレッチ性がありません。
    そのため裏地には、着用時の動きを計算し可能な限りの余裕を入れます。
    肩に必要な横の余裕、背中に必要な縦の余裕、大きく動く袖と膝の余裕がスーツの着心地を決めると言っても過言ではありません。

    そのため、どれほど高級なストレッチ性を持ったウール生地でスーツを作っても、裏地に余裕がなければ窮屈なスーツになってしまいます。
    裏地の余裕は、縫製の技術力が求められる、非常に重要な部分です。

裏地の素材

着用感を左右する裏地選びは、オーダースーツでは重要な項目です。
スーツを着用するたびに感じる快適さを買うと考えれば、価格の差は快適さを感じて過ごす時間の値段とも言えます。
しかし、一言に快適さと言っても使用場面と必要な機能は人それぞれ異なります。
ふさわしい素材を選ぶために各素材の長所と短所を比較します。

  • シルク
    動物性繊維。高級素材。
    長所
    美しい光沢。通気性が良い。
    吸湿性、放湿性にすぐれ快適な着心地。
    短所
    水に弱く、濡れるとシミになる。
    紫外線に弱く、直射日光や蛍光灯、空気中の酸素でも変色しやすい。
    着用していなくても経年劣化する場合があります。高級スーツやコートと言えば、裏地はシルク。
    しかし、高級素材はデリケートな素材でもあります。
    着用時間、回数、用途と価格のバランスを考えると、パーティシーンやビジネスでの会食など、特別な日のスーツにふさわしい裏地です。
    ビジネスでのハードな着用では不便を感じる事も。
  • キュプラ
    高級再生繊維。
    旭化成のブランド、ベンベルグを指します。
    世界トップクラスの優れた繊維です。
    原料は、綿花の種の表面を覆う短い繊維です。
    長所
    綿(コットンリンター)を原料とする繊維であるため、静電気を抑えます。
    シルクのような高級感のある艶と滑らかさ持ち、吸湿性、放湿性に優れています。
    短所
    摩擦に弱い。
    水に弱い。
    強度があまり高くない。シルクと並び高級感があり、快適性に優れた素材です。
    やはり、デリケートでメンテナンスに気を遣います。
    しかし、視覚効果と快適性が勝るためオーダースーツの定番裏地となっています。
    シルクと比べ変色しにくいため、ビジネスや冠婚葬祭で幅広く使用できる素材です。
  • レーヨン
    木材パルプを溶かして作った再生繊維。
    キュプラと同じ再生繊維ですが、繊維はキュプラよりも太くなります。長所
    しなやかな肌触り。光沢があり、染色しやすい。
    吸放湿性があり、静電気を抑えます。
    短所
    水に濡れることで、強度が低下します。

     

    レーヨン単体で裏地として使用されることは比較的少なく、他素材に混紡され補助的役割を果たします。

  • ポリエステル
    石油を原料とした合成繊維。
    最も一般的な裏地素材。
    長所
    強度があり扱いやすい。
    シワになりにくく速乾性がある。
    短所
    静電気を帯びやすい。
    吸湿性が無い。安価で丈夫なポリエステルは、デメリットをキュプラやレーヨンとの混紡でカバーできるため、幅広くスーツの裏地として利用されています。
    また、最近需要が増えている洗えるスーツの裏地はポリエステルです。
    ウールのスーツもクリーニングのみでは汗が抜けないため、時々水洗いクリーニングする必要がありますが、その場合は裏地がポリエステルの方が安心です。
    ハードなビジネスでの使用がある場合は、あえて裏地をポリエステルにしておくことも選択肢の一つになります。

現在、一般的に広く使用されている裏地素材はキュプラとポリエステルです。
特別な日のスーツに快適さを求めるならキュプラ。
実用性重視、強度と扱いやすさを選ぶならポリエステル。
どちらの長所も必要であれば、キュプラとポリエステルの混紡がオススメです。

色柄の選び方

裏地の色
裏地の色はスーツの表地と同系色が無難です。
ビジネスであれば、失礼にならないダークカラーが安心。
ネイビー系スーツには、チャコールグレー(知的)やダークブラウン(お洒落)。
グレー系スーツは、ブラック(上品)、濃淡の違うグレー(落ち着き)、ネイビー(爽やか)。
ブラック系スーツであれば、相性の悪いブラウンを避けて、ネイビーやチャコールグレーが合います。

華やかなパーティーシーンでは、明るいカラーの裏地も素敵ですが、どうしても着用場面が限られてしまいます。

パーティーシーン以外でも着回しができる裏地としては、暗めのボルドーカラーがオススメです。
ブラック、ネイビー、グレー、ブラウンなどのスーツカラーに合います。
また、裏地の光沢感でシルバーに見えるライトグレー、シャンパンゴールドのように見えるベージュ、ゴールドに見える明るめのブラウンなども、上品な華やかさになります。

また、ダークグリーンやダークパープルはかなり個性的で、差し色として目を引く色です。

裏地の柄
表地を主役にシンプルにまとめるなら無地がオススメ。
ビジネスシーンで上着を脱ぐ際も気になりません。
カラフルな大柄や迷彩柄、ボタニカルの植物柄などはパーティーシーン向き。
着こなしやすいことから人気の裏地は織柄です。
ストライプや、ハウンドトゥース、マイクロチェックなど種類も豊富。
しかし、断然オススメはペイズリーの織柄です。
クラシックな柄は現在大活躍中。
角度によって艶やかに輝くペイズリーの織柄は、非常に高級感があります。
また、無地に小紋のように柄を配した生地も同様の効果があり、糸の濃淡で柄を入れたものは、控えめだからこそセンスが光ります。

逆に、少しカジュアルな雰囲気や柔らかさを求めるなら、はっきりとしたチェックやドットがオススメです。
ネクタイ同様、ドットは大きくなるほど親しみやすい雰囲気になります。

オーダーでオンリーワンの裏地選び

上着を脱いだ時、チラ見えする高級感のある裏地。
普段見えない部分のお洒落は好印象です。
特に裏地は、お洒落だけでなく肌触り、袖通りと着心地に関わる部分なので、実際に触れてじっくりと選びたいところ。
織柄の角度による見え方、スーツとの色バランス、ボタンや細かな付属との組み合わせを考えながら、自分だけのスーツを作る楽しみは格別です。
裏地選びは、かなり個人の好みやセンスが出る部分。
是非、お気に入りのスーツ裏地を見つけて下さい。
スーツに一層愛着が湧く事間違いなしです。

まとめ

今回は、裏地の種類や機能についてご説明しました。
裏地のポイントは5つ。
縫製技術が優れているほど、裏地で着心地が快適になる。
メイン素材はキュプラかポリエステル。
頻繁に着用し、水洗いクリーニングを使用する場合は、ポリエステル裏地が安心。
裏地生地の色柄は、ビジネスは無難なダークカラーや無地。
華やかなシーンでは、明るめカラーや大柄。
着用シーンに合わせたスーツと裏地であれば、長く快適に着用出来ますので、じっくりお選び下さい。

裏地は表地にハリを与えてシワをつきにくくしたり、袖通りを良くしたり、スーツを暖かく着られるようにしたりと、非常に多くの面で役に立っています。素材による差も明らかで、シーンや季節に応じて使い分ける必要がありますね。ですが、裏地の種類をよく分かっていないと「冬なのに背抜きのスーツを着てしまって寒い…」「シルクの裏地を濡らしてしまってシミになってしまった…」というトラブルも起こり得ます。最低限裏地の種類と、素材によるなんとなくの違いは押さえておきたいところです。パーティーなどのシーンでは、ぜひ派手で高級感のある裏地を取り入れてみるのはどうでしょう。個性的な着こなしで、周囲からも一目置かれること間違いなしですよ。オーダースーツSADAでは表地の生地はもちろんのこと、裏地のラインナップも豊富に取り揃えています。ビジネスに最適な落ち着いた柄の裏地のスーツを季節ごとに揃えるでも良し、パーティー向けの派手な裏地をチョイスしてみるでも良しです。その時々によって取り揃えている裏地のラインナップは異なるので、一度店舗のスタイリストに聞いてみてくださいね。ぜひ裏地を駆使した、最高の着心地のスーツを仕立ててみましょう!