スーツの芯地には、格付けのようなものがあります。
最も手のかかる仕立ては、表地に接着芯を貼らず、毛芯だけで形をつくるもの。仕立ての世界で最上級とされるのは、この作り方です。
SADAは、そこではありません。表地には接着芯を使っています。そのうえで、メンズには毛芯を四層——台芯、胸増し芯、肩バス芯、フェルト——重ねる構造をとっています。
四層のフロント芯は、今では多くはありません。目に見えない部分のコストを下げることは、やろうと思えばできます。価格にも反映できるでしょう。
それでも、この構造を変えずにきました。SADAの工場には、小売を持たず、他社のスーツを縫っていた時代があります。名前が表に出ない仕事です。それでも、内側の作りまで手を抜かない。着る人には、いずれ分かることだからです。当時から同じ現場に立ち続けている職人が、いまもいます。
機械のほうが正確にできる工程は、機械に任せています。そのぶん、人の手でなければならない工程は変えない。どこを効率化し、どこを残すか。その線引きを、現場が自分たちで決めてきました。
柔らかく、軽く、丸みのある仕立てが主流になるなかで、四層の毛芯は逆の方向にある作りです。「背広」という言葉は、ロンドンの仕立て屋街 Savile Row(サヴィル・ロウ)に由来するといわれています。クラシックで、直線的で、長く着るほど身体に馴染んでいく——SADAが基本に置いているのは、その考え方です。
既製服は、誰が着るか分からないまま作られます。フルオーダーは、その人のためだけに作られる。だからこそ、味が出るまで着てほしい。内側に手をかけているのは、そのためです。
内側は、着ている本人にも見えません。黙っていれば、誰にも気づかれない部分です。それでもこうしてお伝えしているのは、一着を選ぶときの判断材料になればと思うからです。
さらに上を求める方には、「ハイグレード仕立て」という選択肢もご用意しています。馬の尻尾の毛を使った「本バス芯」へのアップグレードを含む、八つの特別仕様です(オプション料金11,000円・メンズのみ)。ラペルの返りに、大きなカーブを描くような立体感が生まれます。生地の種類によっては対応できない場合がありますので、詳しくは店頭でご確認ください。