洋服ブラシの使い方。クリーニングに頼らないスーツのお手入れ方法のアイキャッチ画像
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洋服ブラシの使い方。クリーニングに頼らないスーツのお手入れ方法

スーツのお手入れに洋服ブラシを使用したことはありますか?スーツのお手入れと言えば、クリーニングを思い浮かべるかもしれませんが、ウールのスーツはブラッシングでも十分生地が回復します。ウール100%やウールが混紡されている生地は、ブラッシングをすることで、見た目の発色が良くなり、毛玉になりかけた部分は、ほぐれて元に戻ります。クリーニングは生地の油分を奪いスーツの劣化を招くため、通常ワンシーズンに1回から2回が目安となっています。クリーニングをしない期間は、スーツを着用した後にブラッシングをしましょう。繊維自体に撥水性があるウールはブラシをかけることで表面の汚れを落とし、織り目の詰まりを解消して通気性を高めることが可能になります。洗う事ができないスーツは、このようなブラッシングのお手入れで状態を整えることが大切です。帰宅後、ほんの数分のお手入れで見違えるほどスーツはスッキリとした印象に変わります。ブラッシングをした後は、1日から2日着用を控えて汗の湿気を抜きましょう。この方法でメンテナンスをすることで、スーツのコスパは最大になります。今回は、スーツを回復させるブラッシングのコツと、洋服ブラシの種類、スーツに適したブラシの選び方をご紹介します。

洋服ブラシとは

洋服ブラシとは、主に馬毛や豚毛など弾力性のある獣毛を、木製の本体に植え並べた洋服用のブラシです。

洋服ブラシはスーツやジャケット、コートなどを着用した後に使用します。
ブラッシングで汚れを払い生地を整えると、クリーニングに出したようなスッキリとした見た目に変わり、生地の状態も改善します。

なぜ洋服ブラシでお手入れするのか

洋服ブラシは、水洗いできない衣類のお手入れに役立ちます。
洗えない衣類を水を使わずにお手入れできるため、生地が傷む心配がありません。
スーツ、コート、ジャケットやセーター、布製の車のシートやソファのお手入れにも使えます。
洋服ブラシを使用すれば、洗わずに見た目が美しく保たれ、繊維の状態を整えることができます。

洋服ブラシの役割①汚れを落とす

一日着用したスーツやコートなどのアウターには、排気ガスや花粉、ホコリ、フケ、皮脂、整髪料などの汚れが付着しています。
汚れは繊維の隙間や生地の織り目に蓄積します。
そのまま着用を続けると、スーツは全体的にくすんだ色合いに変わり、織り目は詰まって通気性が悪くなります。

洋服ブラシの役割②生地を整える

洋服ブラシには、摩擦による繊維のからまりを解く、倒れた繊維を起こすなどの役割もあります。
スーツ生地は、通勤でビジネスリュックを背負うと肩や腰が摩擦で傷みます、腕は頻繁に動かすため脇に毛玉ができやすく、ヒップは椅子との摩擦で繊維が倒れてしまうとテカリになります。
このような生地のダメージを定期的に洋服ブラシで整えることで、スーツやコートの劣化を遅らせることが可能になります。

洋服ブラシの役割③クリーニングの回数を減らせる

ブラッシングをすることで、クリーニングの回数を減らせます。

上質なウールには微量の油分が含まれていますが、頻繁にクリーニングを利用すると油分が失われ、生地の特徴である光沢も失われます。
スーツの縫製の糸や内側の芯地などもダメージを受け、徐々に劣化します。
そのためブラッシングで落とせるホコリや皮脂は、クリーニングに頼らないことが大切になります。
定期的に洋服ブラシで汚れを落とし、通気性を上げましょう。
ブラッシングで通気性が良い状態が保たれていると、着用時の汗や湿気も早く乾燥し、臭いの原因となる雑菌の繁殖も抑えられます。
また、衣類の虫は、ウールだけでなくホコリや汚れも餌としているため、虫食いの予防にもなります。

洋服ブラシの種類

洋服ブラシは、ブラシの素材で種類が分類されます。
天然素材である馬毛と豚毛が代表的です。
天然素材はブラッシングをしても、静電気が起きにくいというメリットがあります。

洋服ブラシの素材

馬毛

弾力性があり柔らかく、衣類全般に使用できます。
やわらかな白馬毛とコシのある黒馬毛に分類され、たてがみや尻尾、足の毛などが使用されます。
天然素材の洋服ブラシは、手頃な3000円前後から10万円を超えるものまであります。
使用頻度や使用期間を目安に予算を決めましょう。
長く使いたい場合は2万円から3万前後がおすすめです。
初めて使う場合は数千円程度で、手になじむ木材やブラシのサイズなど、色々試してみても良いでしょう。
近年は、軽くやわらかなイタリア風のスーツ生地が好まれるため、馬毛がおすすめです。

豚毛

馬毛よりも硬く弾力性が強いためデリケートな素材には向きませんが、比較的柔らかな白豚毛はスーツなどにも使えます。
黒豚毛はコシがありホコリを掻き出す効果が強いため、コートなど汚れやすいアウターのホコリ取りに向いています。

豚毛の高級素材であるブリッスル(イノシシの毛)は、やわらかで弾力性があり、カシミヤやシルク混のスーツ生地にも使用できます。

ブラシ本体の素材

手になじむ天然木が人気です。
ブナの木が原料のビーチ材、適度な重みのある黒檀(こくたん)、明るく美しい色合いのサクラなどが使用されます。

洋服ブラシの形

大判型

大きな楕円形で、ハンドル部がなく片側全面がブラシになっているタイプです。
ブラシ部分が広いため、慣れると短時間でブラッシングが可能です。

ハンドル型

ブラシにハンドルがあるタイプです。
持ちやすく、動かしやすいメリットがあります。
洋服ブラシが初めての方は、ハンドルがあるタイプが使いやすくおすすめです。

洋服ブラシの選び方

洋服ブラシの選び方は、使用する衣服の生地が基準になります。

デリケートな生地

カシミアやシルクなどが混紡された繊細な式典用スーツやブラックフォーマル(礼服、喪服)は、白馬毛のソフトなブラシがおすすめです。
生地を傷めずに手入れをするには、柔らかいブラシの弾力性を使って汚れを掻き出す必要があります。洋服ブラシの毛足は、長さが4㎝から5.5㎝のタイプがおすすめです。

通常の生地

一般的な耐久性を持つビジネススーツやオフィスカジュアルジャケットでは、白馬毛や黒馬毛を使用します。
毎日の仕事着として頻繁にスーツを着用する場合は、着用後のブラッシングが短時間で済む大判型の洋服ブラシがおすすめです。

ニット製品

冬場はウォームビズで、ワイシャツの上にカーディガンを着たり、オフィスカジュアルでクルーネックニットを着用したりすることも増えたのではないでしょうか?
ニット製品の場合は、毛玉専用の洋服ブラシがあると便利です。
毛玉の原因となる繊維のからまりを見つけたら、早めにブラッシングをしましょう。

どのように使うの?

洋服ブラシでスーツのお手入れをしてみましょう。
ブラッシングの前には、スーツのポケットの中にある物をすべて取り出します。
ジャケットは厚手のスーツ用ハンガーにかけます。
ハンガーの肩部分は5㎝前後の厚みがあり、素材は木製のタイプがスーツのお手入れに向いています。
スーツのパンツは、パンツハンガーに裾を挟んでおきます。

①ジャケットは上から下へ向かってブラッシング

汚れが少ない室内での着用が中心の場合、ジャケットは上から下へ向かってホコリを払います。
次に、襟を立てて整髪料やフケなどが付着しやすい襟周りと肩をブラッシングします。
襟周りのブラッシングは、ブラシを横に動かし、繊維の間に入った汚れを掻き出しましょう。
肩から胸、背中から腰など、上から下に向かってブラッシングします。
毛玉になりやすい脇部分や、ポケットの内袋も丁寧にホコリを払います。
仕上げは、全体的にブラシを軽く大きく動かして整えます。

外出時間が長く汚れが気になる場合は、最初に下から上に向かって、汚れを浮かせるブラッシングをします。
袖の先やジャケットの裾を持って、下から上にブラッシングします。
生地の流れと逆にブラッシングすると、繊維の中からホコリが表面に浮きます。
浮いたホコリは、上から下に向かって大きくブラシを動かしながら払います。

②パンツは逆さにしてブラッシング

パンツは裾部分が汚れやすいため、専用のパンツハンガーに裾を挟みます。
逆さの状態で、裾からウエストに向かってブラッシングします。
汚れを表面に浮かせたら、ウエストをハンガーに挟み、大きく腕を動かしてウエストから裾に向かってブラッシングします。
パンツのポケットの内袋も引き出し、ホコリを取ります。

ウール繊維の撥水性

ウール繊維には、撥水性があるため汚れにくいという特徴があります。
洋服ブラシで、繊維の表面にとどまっている汚れや織り目に詰まった汚れを掻き出し、絡まりをほどくことで、生地が本来の光沢を取り戻します。

ブラッシング後のスーツは、ホコリによるくすみが消えて発色が良くなり、生地の上質感が引き立ちます。
ブラッシングが完了したら着用時の湿気を抜くために、2日は着用せずに休ませます。
ウールのスーツは着用しない日を作る事で、生地に吸湿された湿気が抜け、繊維が回復します。
乾燥したウール繊維は、湿気を吸った状態よりも摩擦に強いため、着用時のダメージが少なくなります。
そのためブラッシングが終わったスーツは、通気性の良い場所で保管することがポイントになります。

使うときの注意点

洋服ブラシを使用する際には、ブラシを生地に押し付けないように注意しましょう。

ブラッシングをすると生地から汚れが浮き上がりますが、ブラシを押し付けるように使用すると、生地の織り目や繊維の間に、汚れを押し込んでしまいます。

ブラシは弾力のある毛足の長いタイプ(4㎝から5.5㎝)を選び、ブラシのしなりと反発力を利用して、やさしく汚れを掻き出します。
ブラシは生地に対して、直角に当たるように意識しましょう。
ホコリを浮かせるときは、腕の力を抜いてリズムよく、手首を使って軽くブラッシングします。
ホコリを払うときは、腕を大きく動かして汚れを落とします。

天然素材の洋服ブラシは水分に弱いため、雨に濡れたスーツをブラッシングしたり、ブラシ自体を濡らしたりすることがないように注意しましょう。
濡れたまま放置すると、獣毛独特の臭いなどが発生します。
もし、濡れてしまった場合は水分をふき取り、風通しの良い場所で乾燥させます。

洋服ブラシのお手入れ方法

洋服ブラシを使用していると、ブラシの間にホコリや糸くず、毛髪などが溜まります。

そのため洋服ブラシ自体も、お手入れが必要になります。

天然素材のブラシは水に弱く洗う事ができないため、金属製のくしを使って、ブラシの汚れを取り除きましょう。
くしをブラシの根元に差し込み少しずつホコリなどを毛先側に浮かせます。
浮いた汚れは摘まみ取って捨てましょう。
ティッシュなどで包み込んで取り除くと、周囲を汚さずに捨てられます。
天然素材の洋服ブラシは手入れをすることで長く使えます。
油性の汚れは、ぬるま湯で濡らしたタオルやガーゼなどをしっかりと絞り、軽く拭きます。
ブラシの本体部分は水分を吸収しやすいため、仕上げは乾いた布やティッシュで拭き取ります。

まとめ

今回は、洋服ブラシについてご紹介しました。
スーツは洋服ブラシで汚れを落とし、通気性を改善し、毛玉の原因をときほぐすことが可能です。
ブラッシングによってクリーニング回数を減らすと、スーツの劣化や風合いの変化を最小限に抑えられます。

スーツの誕生から現在まで続く洋服ブラシでのメンテナンス方法は、撥水性のあるウールだからこそ可能となるお手入れ方法です。
スーツの素材として親しまれた高級ウールは、なめらかな風合いや存在感のある優雅な光沢で、世界中の人々を魅了してきました。
会った瞬間に分かる生地の上質感は、高級ウールの最大の魅力です。

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今回は、洋服ブラシについてご紹介しました。洋服ブラシは、水を使わずに衣類をお手入れできるため、繊維を傷める心配がありません。特に柔らかい馬毛の洋服ブラシを用意しておけば、衣類全般で使用することが可能です。スーツの見えない汚れを払う事で、生地の持つ本来の発色や、光沢、風合いが蘇ります。ホコリは薄いベールのように、スーツの色をくすませるため、こまめなブラッシングでリセットしましょう。生地の織り目が汚れで詰まると、通気性が悪くなるため着心地も変わってしまいます。襟や肩回りは、整髪料やフケや皮脂で汚れやすいため、必ず襟を立ててブラッシングをすることがポイントです。毛玉になりやすい脇、忘れがちなポケットの中も、月に一度はブラッシングします。洋服ブラシの種類は、数千円から数万円、高価な物は10万円以上となりますが、大切なことはこまめなお手入れです。天然素材の馬毛であれば、丁寧なお手入れで十分効果を得られるため、まずはブラッシングを習慣化してみましょう。生地を整えることで、スーツは美しい状態のまま、長く着用できるようになります。毎朝髪を整えるように、スーツの生地を整えて、爽やかなスーツスタイルを楽しんでください。

三好 星良