
本切羽とは?メリット・デメリットや本開きとの違い、スーツへの必要有無について解説-オーダースーツSADA
スーツを選んでいると、ボタンの配置や数、ポケットの形、袖の作りなど、さまざまな仕様があります。普段あまりスーツを着ない方にとっては、スーツ一着買うだけでも悩んでしまうでしょう。今回はその一つ「本切羽」を紹介します。字面からは日本的で硬派な印象を受ける本切羽とは、具体的にどのようなスーツの仕様なのでしょうか。本切羽の意味や魅力、注意点、どのような方に向いているのかなどを解説します。
本切羽とは?読み方や意味を解説

では早速、本切羽がどのようなスーツの仕様なのか見ていきましょう。
本切羽とは?
本切羽は「ほんせっぱ」「ほんきりは」と読み、業界を中心に「ほんせっぱ」と読むのが一般的です。本切羽はスーツの袖口の仕様の一つで、袖口を開閉できるものを本切羽、開閉できないものを「開き見せ(あきみせ)」と呼んで区別しています。
本切羽は仕立てが複雑で技術が求められるため、ほとんどはオーダースーツのオプションです。既製スーツは、ほとんどが開き見せで仕立てられます。
よく「本開き(ほんあき)」と混同されますが、本開きはボタンを使って袖を開閉する仕様なのに対し、本切羽はボタンに限らず袖が開閉する仕様です。実際にはほとんど同じ物を指す言葉ですが、厳密には異なるため覚えておくと良いでしょう。
そもそもなぜ袖口にボタンがついているの?
スーツの袖口にボタンが付いた理由は諸説あります。
その一つが、かの有名なフランス皇帝ナポレオンが付けたという説です。ナポレオンが軍を率いてロシアへ侵攻していた際、厳しい寒さで垂れてくる鼻水を袖口で拭く兵士を見て、汚れてみっともないからとボタンを付けて拭きにくくしたとされます。
また次に紹介する説も有名です。
昔はボタンとして機能していた
今では飾りに過ぎないスーツの袖口のボタンも、昔は実用的なものだったとされます。
かつてヨーロッパでは、外でジャケットを脱がないのがルールでした。19世紀初頭、シャツはインナーであり、人前で見せるものではないと考えられていた時代。医者が手術をする際、人前でジャケットを脱がずに袖が汚れることも防ぐ方法として、袖を開閉させてまくれるようにしたのが本切羽の起源とされます。
本切羽が英語で「surgeon’s cuffs(外科医の袖口)」といわれたり、ドクタースタイルやドクターカフと呼ばれたりするのは、かつての時代背景によって生まれたとする説によるものです。

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本切羽仕様のスーツのメリット

本切羽仕様のスーツには次のようなメリットがあります。
- おしゃれを演出できる
- 高級感がある
- 通気性が良い
袖口を開閉する機会がほとんどなくなった現代では、機能面よりもデザインやファッション性の高さのほうが大きなメリットといえるでしょう。
おしゃれを演出できる
本切羽仕様の袖口のボタンを外すと、スーツ本来のかっちりとした印象からほどよく着崩した雰囲気のおしゃれを演出できます。ただボタンを外すだけでも良いですが、外すボタンを1つだけにする、袖を折ったりまくったりする、シャツの袖を出すなどして抜け感を出すのもおしゃれです。本切羽の重ねボタンで高級感とおしゃれを演出するのも良いでしょう。
ジャケットを着ていると手首が隠れてしまいますが、本切羽のジャケットは袖口を開けられるため腕時計やブレスレットなどを見せる着こなしもできます。
高級感がある
開き見せに比べて縫製の手間や技術が必要な本切羽は、オーダースーツのオプションがほとんど。量販店で販売される既製スーツではほとんど見かけず、本切羽で仕立てたスーツは特別な高級感を与えられます。あえて本切羽を選ぶことで、スーツをよく知る上級者からも一目置かれるでしょう。
ただ本切羽自体=高級ではありません。手間や縫製技術が求められるため高級品で採用されやすいものの、開き見せ仕立ての高級品もたくさんあります。とくにイギリスのスーツはクラシカルな開き見せが多く、高級品でも多く採用されているので覚えておきましょう。
通気性が良い
本切羽のスーツは袖をまくりやすいため、通気性にも優れます。スーツは通気性の悪さが弱点です。現在は、クールビズの浸透で夏場にジャケットを着用する機会は減りました。ただ状況によってはジャケットを着なければならない場合もあるため、袖をまくれる本切羽のジャケットがあると快適さが向上します。
季節にかかわらずジャケットを着用してスーツ本来のポテンシャルを発揮したい方、快適さとおしゃれさを両立したい方などは本切羽仕立てのスーツがおすすめです。

正しい袖丈がポイント!スーツをかっこよく着こなすための袖先の選び方を解説
スーツを選ぶとき、着丈を気にして選ぶことは多いと思いますが、それと同じくらい重要なのが袖丈です。袖丈とは、肩先から袖口にあたる腕のくるぶしまでの長さのことです。袖丈は、短すぎるとジャケットからワイシャツが大きく出ていてバランスが悪いですし、長すぎてもだぼっとしてスーツに着られている感が出てしまいます。背丈や体格は人それぞれであるため、一人一人に合った袖丈があります。自分にはどのくらいのものが合うのかを正しく把握したうえで、しっかりとフィットするものを選ぶことで、かっこよくスマートに着こなすことができます。
本切羽のデメリットと注意点

本切羽仕様のデメリットは、例えば次のようなことが挙げられます。
- 値段が高い
- ボタンの穴に引っかかる
- 袖丈の調整が難しい
おしゃれで機能性も良い本切羽仕様の既製スーツが出回りにくいのは、さまざまな点でコストがかかりやすいことが一因です。
値段が高い
本切羽のスーツは、開き見せと比べて使う生地が多く縫製技術も求められるため、価格が高くなりやすいことがデメリットです。
コストがかかると生産効率が落ち、販売価格も上がるため量販には向かなくなります。紳士服ブランドで販売している既製品は、ほとんどがコストを抑えられる開き見せです。本切羽よりコストが低く量産しやすいため、既製スーツはほとんどが開き見せで仕立てられてます。
現在では開き見せだけでなく、本切羽も機械で作れるようになりました。コストの差も縮小しつつあるものの、依然として多くのブランドは開き見せが主流。本切羽は追加料金がかかることが多いです。
ボタンの穴に引っかかる
本切羽は袖口にボタンを通す穴(ボタンホール)が開いているため、物が引っかかりやすいのもデメリット。ボタンを外すとホールがむき出しになり、引っかかりやすくなります。飲み物をこぼしてスーツを汚したり、木の枝に引っかけて破いたりしないよう注意しましょう。
袖丈の調整が難しい
本切羽のスーツは、開き見せより袖丈の調整が難しいことが最大のデメリットです。とくに袖丈を短くする場合に制限が多く、費用がかさみやすいため注意が必要です。体型の変化が少なく、将来的にお直しの可能性が低い方向きの仕立てといえるでしょう。
袖口にボタンホールがある本切羽は、袖口から詰められる幅は2~3cm程度が限界です。袖口からの調整が難しい場合は腕を入れる部分(アームホール)を肩側から調整する必要がありますが、アームホールはジャケットの見た目の良し悪しを大きく左右する部分。高い技術が求められるため料金も高く、1万円以上かかることもあります。
本切羽は袖丈詰めのお直しが難しいため、調整の必要がないようジャストサイズで仕立てることがポイントです。自分の体型にぴったり合わせて仕立てるオーダースーツなら、安心して本切羽に仕立てられるでしょう。

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本切羽仕様の種類

本切羽はボタンの仕立て方の違いで2種類に分けられます。
- 並べボタン
- 重ねボタン
改めて本切羽と開き見せの違いを整理するとともに、並べボタンと重ねボタンの違いを見ていきましょう。
「本切羽」と「開き見せ」の違いを比較
本切羽が袖口のボタンを開閉できるのに対して、開き見せのボタンは単なる飾りです。それぞれの違いは、実際に袖口を開閉できるかどうか。一見すると同じような見た目ではあるものの、見る人が見ればすぐに違いに気づきます。コストや技術がかかる本切羽のほうが数千円~1万円程度高額です。
並べボタンと重ねボタンの違い
並べボタンは、袖口のボタンが重なることなく一直線に並んだデザインです。重ねボタンも同様に一直線に並んでいますが、ボタン同士が少し重なって配置されます。重ねボタンは、ボタン同士が重なり合う見た目からキッスボタンとも呼ばれ、見た目のおしゃれが強調されるデザインです。
重ねボタンは、並べボタンより技術を必要とする仕様です。かつてイタリアのスーツ職人が、自分の技術力をアピールするために作り出したデザインとされます。手作業でしか作れませんでしたが、現在では機械でも作れるようになりました。
現在のスーツは、並べボタンが一般的です。あえて重ねボタンにすることで、個性的でおしゃれな印象をアピールできるでしょう。
本切羽スーツの着こなし方

スーツの袖を本切羽に仕立てると、着こなしにバリエーションが生まれます。たかが袖口と侮るなかれ、相手に与える印象を大きく左右するポイントです。着こなしにちょっとした変化を加え、ほかの人とは一味違う印象や雰囲気を演出しましょう。
ボタンを外す
本切羽はボタンを外すだけでも印象が変化し、おしゃれな着こなしになります。
スーツが纏う多少の堅苦しさは仕事着としては必要ですが、普段着向きとは言いにくいもの。ところが袖口のボタンを外すだけで隙が生まれ、堅苦しさが弱まりカジュアルな雰囲気と大人の色気が漂いはじめます。
スパイ映画『007』には、主人公のジェームズボンドが袖口のボタンを外しているシーンが何度も登場。ヨーロッパのサッカー選手の私服や「ちょい悪おやじ」の服装も袖口のボタンを外しているものが多いことも納得でしょう。
インナーを折って出す
インナーのシャツを折ってスーツの外に出すのも定番のこなれた着こなしです。
たとえば黒いジャケットの袖から白いシャツ見せると、ちょっとした違和感が生まれます。些細な違和感から個性が生まれ、他人と違うおしゃれな印象を演出できるでしょう。
おしゃれのポイントは3つの「首」を出すこと。首、手首、足首を露出することで、大人の色気やセクシーさを演出できます。腕時計やブレスレットを身につけて、アクセントにするのも良いでしょう。
袖をまくる
インナーのシャツを折って、さらに肘のあたりまで袖をまくるのもおすすめです。
男性の袖まくりに好印象を持つ女性は多く、スーツが持つ印象アップ効果も相まって男性的なかっこよさを強く印象付けられるでしょう。
しかし、スーツで袖をまくる着こなしは日本人にとって馴染が薄く、個性的な着こなしだと感じることも少なくありません。逆効果になるリスクも孕んでいるため、十分に注意が必要です。
インナーやパンツとの組み合わせ、身につけるアクセサリーなどで印象は大きく変わるため、ファッション誌などを参考にして上手にスタイリングしましょう。

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本切羽は必要?選ぶべき人・選ばなくて良い人

スーツを本切羽仕様にするべきかどうかは、目的やニーズなどによって変わります。自身で判断に迷う場合は、次のような基準を参考にすると良いでしょう。
次のようなニーズを抱えている場合は、本切羽がおすすめです。
- オーダースーツ初心者でも着こなしにこだわりたい
- 高級感あるスーツがほしい
- カジュアルシーンにも対応したい
次のような方は、本切羽を選ばなくても良いでしょう。
- 体型の変化が大きい
- 袖丈直しを想定している
- 少しでもコストを抑えたい
高級、高品質なイメージを持たれることも多い本切羽ですが、誰もがメリットを享受できるとは限りません。場合によってはデメリットのほうが大きい可能性もあります。本切羽=良いものと一様に考えるのではなく、メリットやデメリット、メンテナンス性、コストや自分のニーズに合っているのかなどを考慮して判断しましょう。
オーダースーツで本切羽を選ぶときのポイント

オーダースーツで本切羽を選ぶ場合は、多くがオプションで追加料金がかかります。開き見せに比べるとコストがかかりますが、ボタンの数や配列、配置などデザインを自由に選べるのが魅力です。
本切羽仕様のスーツはコストが高くなるのがボトルネックですが、オーダースーツSADAならオーダースーツをリーズナブルな価格で作れます。プロのアドバイスを受けながら店舗で実物をて仕様を考えられるため、初めての方でも安心です。
ボタンの数を選べる
スーツの袖口に付いているボタンの数は3~4個が一般的です。礼服で3個、ビジネススーツで4個がオーソドックスな数ですが、オーダーメイドならボタンの数も自由自在。3個より少なくしたり5個以上付けたりすることも可能です。
スーツの袖口のボタンの数には明確な決まりはありません。希望すれば6個以上付けることもできますが、あまりに多すぎると不自然な印象を与えるため最大5個程度を目安にきましょう。
自分好みのボタンにできる
オーダーメイドスーツはボタンの数を選べるだけでなく、色や大きさも自分好みのものにカスタマイズできます。
一般的に袖口のボタンは黒やグレーなどの落ち着いた色が使われますが、目立つ色やデザインを選べるのもオーダースーツの魅力です。少しだけボタンの色やデザインを変えるだけでも印象がガラリと変化します。
オーダースーツで選べるのは、ボタンそのものの色や形だけではありません。縫い付ける糸の色も変えられるので、より個性的で自分らしいおしゃれなスーツに仕上げられます。
袖丈の調整で直しが不要
オーダースーツは、一人ひとりの体型にぴったりとフィットするように仕立てられるため、あとから袖丈のお直しが必要になる心配がありません。オーダースーツSADAが提供するフルオーダースーツは全身20カ所以上の採寸を行うため、どのような体型にもぴったりとフィットします。
よくある質問【Q&A形式】

最後に本切羽についてよくある質問をまとめます。
Q1.「本切羽の袖丈直しって本当に無理?」
本切羽の袖丈直しは、条件によっては可能です。袖口を詰められない場合でも、肩側を詰めることで対応できる場合があります。ただし高い技術が求められるため、お直し費用は高めです。
Q2.「ボタンを外してもマナー違反じゃない?」
本切羽のボタンを外すこと自体はマナー違反ではありません。ただネガティブな印象を持たれる場合もあるため、カジュアルシーン以外では基本的にボタンを留めたほうが良いでしょう。
本切羽はボタンを留めたり外したりできるのが魅力です。TOPに合わせて上手に使い分け、さまざまな印象を演出しましょう。
Q3.「レディーススーツにも本切羽はある?」
レディーススーツでも本切羽を選べます。男性用スーツに比べて自由度が高いこともあり、本切羽仕様のレディーススーツは近年とくに人気です。
Q4.「どれくらいの価格アップになる?」
オーダースーツブランドにもよりますが、本切羽のオプション料は一般的に3,000円~1万円程度です。オーダースーツSADAは、2,000円+税で本切羽が選べます。
まとめ:本切羽を知れば、スーツの“格”が変わる

本切羽仕様のスーツは高級感ある印象を与えられるだけでなく、フォーマルからカジュアルまで幅広いシーンに合わせてスタイルを演出できるのが魅力。本切羽かどうかの違いだけでもスーツの格が変わります。
ただ闇雲に本切羽仕様にすれば良いとも限りません。本切羽のメリットやデメリットを理解し、自分に合っているかどうかの判断が必要です。
オーダースーツSADAでは、本格的なフルオーダースーツがリーズナブルな価格で作れます。豊富な知識と経験を持つプロが希望や要望を聞き、店舗で実物を見ながら仕様を決められるため初心者でも安心です。初めての方ほどお得なプランも用意されているので、まずはお近くの店舗で無料カウンセリングを受けてみましょう。来店予約をお待ちしています。
本切羽の歴史やメリット・デメリットをはじめ、本切羽仕様の種類や着こなす上でのポイントなどを紹介しました。本切羽とは、スーツの袖口についているボタンのデザインの一つです。袖口のおしゃれポイントである本切羽ですが、既製品のスーツではあまり使われていないので、取り入れたい場合にはオーダースーツを検討しましょう。オーダーメイドのスーツなら、本切羽のボタンの数を選んだり色や大きさも自分好みのものにすることができるため、華やかさを演出しつつ他と差をつけられます。また、ボタンが飾りではなく開け閉め可能なため、通気性が良く高級感を演出できるというメリットがあります。オーダースーツSADAでは、専門のスタッフがしっかりサポートするため、フルオーダーの楽しさ、快適さ、フィット感はもちろんのこと、着回しの相談や着こなしに関しての些細なお悩みにも親身にお答え致します。オーダースーツSADAでその魅力を体験してみてください。