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スーツのベストとは何か?ベストの基本から生地の素材やボタンの種類、そしてコーディネートまで徹底解説

スーツのベストを着たことのあるビジネスマンはそれほど多くないかもしれません。日本での主流はジャケットにベストを合わせたツーピーススーツ。多くの方がはじめて着るスーツとなるリクルートスーツがツーピースのため、就職後も違和感なくツーピーススーツを選ぶでしょう。しかし、スーツの歴史をさかのぼっていくと原形となったものはスリーピース。つまり、スリーピーススーツが基本なのです。これまでスリーピーススーツを着るのは管理職など一定以上の役職や年齢の方が多かったかもしれません。しかし、クラシカルなデザインやスタイリッシュなスタイルが若い方を中心に注目を集めているといわれています。また、オッドベストと呼ばれるベストもあります。スリーピーススーツのベストはスーツとのセットアップですが、オッドベストは単品で販売され色や柄がスーツと異なるもの。コーディネートには経験とセンスが必要な難しいアイテムですが、着こなせるとオシャレの幅がグッと広がるのです。いきなりベストといわれても困るかもしれません。しかし、安心して下さい。この記事ではベストの基本から、生地やボタンの種類、そしてコーディネートまで幅広く解説しています。あなたもベストを着る一歩を踏み出してみませんか?

鏡の前に立って自分のスーツ姿を見てみる。今着ているのは入社直後に買ったスーツ。

そういえば来年は社会人になって10年の節目。今度はベストがついたスーツに挑戦してみたい、と思っている。

最近では若い方にもベストが好まれるようになり、幅広い年齢の方から人気のあるベスト。しかしベストには多くの種類があり、はじめての方はスーツとの合わせ方がわからないかもしれません。

あなたはまず、インターネットでベストについて調べます。こうすればいいという「How to」はわかっても、その理由は詳しく書かれていないもの。男性であれば「自分が気に入っているもの」の歴史や背景がわかれば、より愛着が持てますよね?

この記事ではベストの基本だけでなく、歴史や背景にも触れています。また、4種類あるベストの違いだけでなく、ベストに使われる生地やボタンについても丁寧に解説。最後にはベストを使ったコーディネートも紹介いたします。

また、ジャケットスラックスとセットになったベストだけでなく、単独で販売されるオッドベストにも触れています。

ぜひ、この記事を最後まで読んであなたのお気に入りのベストを見つけてください。

ベストの基本

はじめに紹介するのは「ベストの基本」です。人気の理由や、たくさんあるベストの呼び方などまずは基本をおさえましょう。

スリーピースーツとは?

そもそもベストとは何でしょうか?基本の「き」から説明いたします。

日本でスーツと聞くと、ジャケットスラックスツーピーススーツを想像する方が多いと思います。今朝の電車の中で見かけたビジネスマンもツーピーススーツを着ていたかもしれません。

しかし、中にはジャケットワイシャツの間に、オシャレな「何か」を着ている人がいたかもしれません。その「何か」がベストです。

ジャケットスラックスだとツーピーススーツ、ベストを着ると3点セットになるのでスリーピーススーツと呼びます(三つ揃えと呼ばれることもあります)。スリーピーススーツの特徴はジャケットスラックスベストを同一の生地、色、柄で仕立てること。スーツの生地で覆われる面積が増えるので、よりクラシカルに見えるのです。

また、ジャケットスラックスとセットになっていない「オッドベスト」と呼ばれる単独で販売されるベストもあります。オッドベストスリーピーススーツのベストに比べると着こなしが難しいものの、マスターすれば自分だけのスタイルを楽しめます。

ベストはなぜ人気なのか?

もともとベストは管理職など一定以上の立場や年齢の方が好むスタイルでした。しかし、近年は比較的若い方にも好まれるようになってきています。人気の秘密は何でしょうか?

一つ目はツーピーススーツが一般化しすぎたこと。

現在、日本でスーツと聞くと多くの方がツーピーススーツを想像するでしょう。リクルートからビジネスまで幅広く使えて、スーツ量販店に行っても目に飛び込んでくるのはツーピーススーツばかり。オーダー専門店やテーラー以外ではベストを探す方が難しいもの。これほどツーピーススーツは一般化したのです。

しかし、あるトレンドの後には必ずまた別のトレンドが始まるのが世の常。現在では若い方を中心にスリーピーススーツに興味を持つ方が増えてきているのです。

二つ目は見た目や雰囲気の良さ。

スリーピーススーツを着ている方を見るとあなたはどのような印象を持ちますか?「仕事がデキそう」「リーダーシップがありそう」と感じる方も少なくないと思います。その印象を作り上げるのは、ベストが持つ紳士らしい落ち着きと知的な雰囲気。ベストを着るだけで周りの方のあなたを見る印象が変わるのです。

三つ目は着用シーンの広さ。

一着ベストを持っておけばビジネスシーンから結婚式やパーティーまで幅広く使えます。ビジネスシーンではネクタイの色柄のバリエーションでシンプルに勝負。そして、結婚式やパーティーではポケットチーフをあしらったり、蝶ネクタイに挑戦したりするのもOK。ベストはさまざまな表情を見せてくれる力強い味方なのです。

ベストの呼び方

日本では「ベスト」という呼び方が一般的。しかし、国が変わると呼び方も変わるもの。ここではベストと同じ意味を持つ言葉(呼び方)を紹介いたします。

はじめはベスト

ベストはアメリカでの呼び方でスペルは「vest」です。ベストは英語ですが、アメリカとイギリスでは意味が異なります。アメリカでベストと言えば、私たちが想像するジャケットの下に着る胴囲ですが、イギリスの場合はなしの肌着(タンクトップ)という意味になります。

出張でイギリスに行く機会が多かったり、イギリス人と仕事をする機会が多かったりする方は覚えておきましょう。

それではイギリスではベストのことを何と呼ぶのでしょうか?

答えはウエストコート、スペルは「waistcoat」です。イギリスでウエストコートというとがない腰丈の上着(中衣)のことを指します。ウエスト(銅)を覆うコートと覚えましょう。

三つ目はジレ

ジレはフランスでの呼び方でスペルは「gilet」です。フランスでベストというとのない上着(ダウンベストのようなアウター)のこと。一方、ジレは前面と背面で生地の質感が異なるなしの胴着のことを指します。

四つ目はパンチオット。

パンチオットはイタリアでの呼び方でスペルは「panciotto」です。ちなみにシャツは「camisia」(カミーシャ)と呼びます。言葉を聞くだけでもイタリア人の陽気な国民性が伝わってきます。

最後はチョッキ

チョッキと聞くと古く聞こえるかもしれませんが、かつて日本ではベストのことをこのように呼んでいました。語源は「直接着ること」であり、腹・胸・背中を覆う丈の短い胴着の意味です。

スリーピーススーツ以外のベスト

ベストと聞くとスリーピーススーツばかりかと思うかもしれません。しかし、ジャケットスラックスとセットになっていないベストがあるのです。それが「オッドベスト」。「オッド(odd)」とは片方の、半端のという意味です。

スリーピーススーツとは違って単独で販売され、コーディネートもジャケットスラックスと同一にするものではありません。無地だけでなくチェックやストライプなど豊富な柄も特徴。お気に入りの一着を探す楽しみもあります。

ベストを着用するメリット

ジャケットを脱いだ時の印象を変えてくれるだけではなく、ベストのメリットはいろいろあります。ではベストを着用すると、どのようなメリットがあるのかみていきましょう。

おしゃれなコーディネートができる

スーツだけよりもベストを合わせて着こなせるようになると、オシャレ度がグッと上がる効果があります。スーツとシャツ、ネクタイもとにベストが加わることで、Vゾーンに華やかな空間が生まれるためです。また、ベストネクタイが立ち上がるように着こなせると、結婚式やパーティーなどではより華やかさも演出できます。

いつものスーツスタイルをもっとおしゃれに着こなしたい時は、ベストを合わせてみましょう。上品でクラシカルな雰囲気が加わり、おしゃれなコーディネートになります。

スタイリッシュに見える

スーツをスタイリッシュに着こなすには、ベストがおすすめです。ベストはおしゃれに見せられるだけでなく、体型をカバーしてくれる効果もあります。

年齢とともにお腹周りが気になる方でも、体型に合わせてサイズとデザインを選べばスタイルアップできます。ベストを使って、自分の理想的なスタイルのファッションを楽しみましょう。

ジャケットなしでもフォーマルになる

ベストはオシャレ感を演出できるだけでなく、ジャケットなしでもフォーマルな印象が保てます。日本のビジネスシーンではジャケットを脱いでシャツだけのスタイルでも問題ありませんが、マナー違反となってしまう場面もありますので注意が必要です。

もともとヨーロッパにおいてワイシャツは下着とされていたので、ジャケットを脱ぐことで下着だけになると考えられているからです。夏の暑い日や蒸し暑い室内では、ジャケットを脱ぎたくなることもあると思います。

しかし、結婚式のような華やかでフォーマルな式典で、ジャケットを脱いでシャツ姿になるわけにはいきません。そのときベストを着用していれば、ジャケットを脱いでもマナー違反にならないのです。格式高いイメージに着こなせる上に、ジャケットを脱いでもフォーマル感を保てます。

ジャケットを気軽に脱げるのはとても大切なこと。暑いときにシャツ姿になることを避けるため、無理してジャケットを着ていると体が熱くなり汗をかくでしょう。汗をかいたときにはまず自分自身が不快な思いをします。

しかし、しばらく経つとワイシャツについた雑菌と反応してニオイの元になることも。そうなってしまうと、周りの方に不快な思いをさせてしまいます。

スーツは周りの方への感謝の気持ちや敬意を表現するもの。自分自身のことも大切ですが、周りの方のこともしっかり考えられるのがデキるビジネスマンです。

季節に合わせて体温調節できる

ベストは着こなす楽しみもありますが、着脱することで寒暖差に対応できます。コートを着るほどでもないけど、少し肌寒い時などはベストがとても重宝します。

季節に応じて暑い時は薄手の素材のベストで涼しく過ごし、寒い時はウールなどの厚手の素材で防寒するなど、素材を選んで調節するのもありです。それにベストはコンパクトなため、脱いでもかさばらないので邪魔になりません。

ベストはおしゃれに着こなせるだけでなく、体温調節ができて快適に過ごせるアイテムです。

ベストを着用するデメリット

メリットの多いベストですが、実はデメリットもあります。一つずつ確認してみましょう。

周囲に華美という印象を与えることがある

ベストを着るとスーツ生地が体を覆う面積が増えるため、スタイリッシュな印象になります。また、胸元の立体感が増すため威厳があるような印象にもなります。しかし、人によってはベストを「華美」ととらえることもあるかもしれません。

着る人の立場や年齢を選ぶ

ベストはもともと管理職など一定以上の立場や年齢の方が着ていたもの。その風潮が今でも残り、着る人の立場や年齢を選びがちな部分もあります。まずは自分自身の立場は年齢を考えてみましょう。難しい問題ではありますが、この役職ならOK、この年齢ならOKという基準はありません。

周りでスリーピーススーツを着ている方を参考にして、あなたが所属する組織の中で浮かないようにベストを楽しみましょう。

ベストの歴史

宮廷で王族や貴族が着ていた服が時代とともに変化したものがスーツ。ベストの歴史はスーツの歴史でもあるのです。

衣服改革宣言とは?

1666年9月2日。多くのロンドン市民が眠りについていた午前1時。あるパン屋のかまどから大惨事がはじまったのです。かまどから出火した日はロンドンの街中に燃え広がり、燃え続けた4日間で市内全域の家屋のうち約85%を焼き尽くしたといわれています。

同じころ、ペスト菌の大流行にも見舞われていたロンドン。1656年〜1666年の18か月のうちにロンドン市民の約¼に相当する10万人の死者が発生したと言われています。

大変なことが重なる中、イギリスの当時の国王であるチャールズ2世がある宣言を発表したのです。

「余は、新しい衣装を一式採用することにした。この衣装はもう変えることはない。」

当時、貴族の男性の衣服はタブレット、ブリーチズ、シャツの3点セット。

 ・タブレット:着丈が短く体にピッタリフィットする衣服

 ・ブリーチズ:かぼちゃのようなふくらみを持たせた半ズボン

 ・シャツ  :タブレットの下に着る中衣

いわゆるかぼちゃパンツを履いた王子様スタイルが、貴族の男性の主流。これでも十分豪華な衣服に見えますが、脚のをよく見せるためにブリーチズの中に入れる詰め物、巨大なレースやリボンの飾り、そして長髪のかつらなど女性よりはるかに華美な格好をしていたのです。今では信じられませんよね?

なぜ当時はこのような衣服を着ていたのでしょうか?質の高い服をスタイリッシュに着こなす。これが当時の出世に必要なことだったそうです。現代の日本の会社で言うところの世渡りといったところでしょうか。

しかし、当時のロンドンは前述の大火事やペストの流行により庶民の不満がたまっていたころ。しまいには市民から「道楽におぼれている宮廷や貴族に天罰がくだった」と言われる始末。宮廷には改革が必要だったのです。

改革をわかりやすく伝える手段に選ばれたのが「衣服改革宣言」。不必要に華美は服装はやめてシンプルなスリーピーススーツを着ることにした宮廷の貴族。これほど目に見えてわかりやすい方法は他になかったかもしれません。

しかし、これまで華美な衣服を当然のように身にまとっていた貴族が、それほど簡単に身なりを変えられるでしょうか?衣服のスタイルの変更により倹約を推奨された貴族でしたが、急に質素な格好などできません。新しいアイテムであるベストに興味を示した貴族は、のちにベストを贅沢品として発展させていったのです。

ここで衣服改革宣言のポイントを三つ紹介いたします。

一つ目のポイントは、ベストという新しいアイテムの導入により男性のファッションへの関心が高まったこと。それまで出世の手段でしかなかった衣服に、ファッションという楽しむ要素が加わったのです。

二つ目のポイントは、今後トレンドがどう変わろうともスリーピーススーツのスタイル(原)は変わらないというアンチファッション宣言だったこと。新しいトレンドを作ったのではなく、普遍的なスタイルを作ったのです。

三つ目のポイントは、質素倹約の象徴であるベストが装飾的なアイテムに発展したこと。ツーピーススーツが主流の現在の日本では、なおのこと装飾的に見えます。

このようにして誕生したのがスリーピーススーツの原。「改革」とはいったものの現在のスリーピーススーツのにいきなりなったわけではありません。上着(ジャケットではなくコート)の丈は長く、下半身に履いているのは相変わらずブリーチズ。長髪のかつらはそのままでハイヒールも履いているのです。

宣言前より質素になったとはいえ名残があり、現在のスーツスタイルとはまったく違うものであったことを補足しておきます。

スーツやベストのはじまりとなった「衣服改革宣言」。のちにスーツの歴史の節目として語られることになるこの出来事は、当時の世相や庶民からの圧力によって誕生したものだったのです。

ベストのなりたち

衣服改革宣言前後の様子も覗いてみましょう。

衣服がこの世界に誕生したころ、その役割は防寒や防暑でした。しかし、紀元前2400年頃になると装飾性の高いビーズがついたドレスがエジプトにあったと言われているのです。

13世紀〜14世紀ころにはプールポアンという服がありました。プールポワンは軍服の護身着でしたが、のちに一般市民の胴着へと変化するのです。もともとがついていた衣服でしたが、

その後着丈丈が短くなり、身幅も体にフィットするような細いものに変化。そして17世紀後半には防寒服から変化した上着を着るようになりました。

19世紀後半に現在のようなスリーピーススーツのに落ち着いたときに、はなくなっていたと言われています。19世紀の後半、日本でいうところの明治維新の頃にようやく現在見るようなベストになったのです。

日本でベストが普及した経緯

それでは日本国内ではどのようにベストが広まっていったのでしょうか?

日本にスーツが伝わったのは、幕府による鎖国が終わった明治維新以降といわれています。西洋人がすでに着ていたスーツ。西洋人と対等に商売(貿易)をするために同じようにスーツを着るほうがいい、という風潮とともにスーツが広まっていきました。

しかし、当時のスーツは今とは比べ物にならないほど高価なもの。商売に携わる人の中でも、ごく一部の限られた人しか着られなかったことでしょう。それでもスーツは徐々に広まっていき、明治の頃にはまだ和装の人が多かったものの、大正に入るとスーツを着る男性が増えていったといいます。

当時のスタイルはベストを着るブリティッシュスタイルが当たり前。スーツを着た人であふれる街は今よりもクラシカルな雰囲気だったかもしれません。

戦前まで、日本で販売されていたスーツはほぼすべてがオーダーメイド(今でいうフルメイド)の超高級品。庶民がスーツを着られるようになったのは、戦後に縫製が機械化されて大量生産できるようになったころです。

ちなみに明治5年(1872年)11月12日に、日本で礼服として洋服(フロックコートなど)が採用されるようになりました。これを記念して毎年11月12日は「洋服記念日」として制定されています。

ベストに使われる素材

ベストの歴史がわかったところで、今度はベストに使われる素材を確認してみましょう。ベストの表面にはジャケットの表面の生地、ベストの背面にはジャケット裏地が使われます。それぞれどのような素材が使われるのでしょうか?

ベストの正面に使われる素材とは?

ウール

最もオーソドックスな天然素材であるウール。羊の毛を使って作られる素材で、主な産地はオーストラリアやニュージランドです。ウールには次のようなメリットとデメリットがあります。

ウールは熱伝導率が低い素材であり、外気を遮断する効果を持ちます。そのため、夏は涼しく冬は暖かく着られるのです。

たとえば、同じ温度のホットコーヒーがアルミ缶とペットボトルにそれぞれ入っていたとします。アルミ缶を持ったときとペットボトルを持ったときでは、感じる温度に違いがあるのは直感的に分かると思います。このように素材はそれぞれに違った熱伝導率(熱の伝わりやすさ)を持っているのです。

ちなみに、アルミニウムの熱伝導率は250W/(m・K)であり、羊毛ウール)の熱伝導率は0.039W/(m・K)です。ウールがいかに熱を伝えにくい素材なのか分かると思います。

他にも染料に染まりやすく色落ちしにくい、汚れにくい、型崩れしにくいなどの特徴があります。型崩れしにくいため、仮にシワになったとしてもスチームをあてるとすぐ元に戻ります。

しかし、水洗いをすると縮んで硬くなってしまうので注意が必要です。クリーニングは基本的に石油系の洗剤を使用するドライクリーニングとし、食べ物や飲料など水性の汚れを落としたいときには信頼できるクリーニング店に相談する必要があります。

シルク

蚕の繭を紡いで作る天然素材であり、かつては日本国内でも多く生産されていました。当時は蚕のえさとなる桑畑が多かったようです。なぜ、日本のシルクは盛者必衰の理をあらわしたのでしょうか?

安政6年(1859年)に開港した横浜港。当時すでにヨーロッパで盛んに生産されていたシルク。しかし、ヨーロッパでは微粒子病という蚕につく伝染病が流行っており、ヨーロッパの蚕を全滅させるのではないか?というほど猛威を振るっていたのです。

同じころ、イギリス人が横浜港にある商店でたまたま生糸を高値で買いました。当時、英語をほとんど話せなかった日本人はこれをビジネスチャンスととらえて、シルクの販売に力を入れ始めたのです。

その後生糸や蚕種(蚕のたまご)が飛ぶように売れる時代がやってきました。大正3年(1914年)から4年間続いた第一次世界大戦が終わってもシルクの生産量は伸び続けますが、世界大恐慌によりアメリカ向けのシルクが売れなくなってしまったのです。

また、ナイロンなど高機能で安価な人工素材が開発されるなど、シルクの立場はますます悪くなる一方。日本国内での和装需要の減少も相まって生糸産業や養蚕業(ようさんぎょう)は終焉を迎えたのです。

吸湿性や保湿性、そして放湿性など着心地におおいに関係するメリットがあるのがシルクの特徴。静電気を帯びにくいので秋冬でも安心して着られます。着心地だけでなく見た目のメリットも大きいシルク。光沢が強くさわり心地が滑らかなシルクは、他の素材にはない存在感があります。スーツでは光沢を出したいときにウールシルクの混紡を使います。

このような特徴を持つシルクですが、残念ながらデメリットがあります。それはウールよりさらにデリケートであること。摩擦や熱に弱く縮みやすい特徴があるため、取り扱いに注意が必要です。

モヘア

モヘアアンゴラヤギの毛で作られる天然素材。もともとはチベットやヒマラヤなど寒暖差が激しい地域で暮らしていたアンゴラヤギ。数千年前に遊牧民がトルコ(当時のオスマントルコ)へ運び家畜化されたといわれています。

その後18世紀中頃まではトルコがモヘアの取引を独占するため、オスを輸出するときは去勢してから輸出していたほど。トルコ人は古くからモヘアが持つ素材としての価値に気付いていたようです。

その後南アフリカがアンゴラ山羊の生殖に成功します。トルコの強力な施策の中で生殖に成功できたのは、南アフリカにわたったアンゴラヤギの中にたまたま妊娠したメスがいたからといわれています。

その後アンゴラ山羊はアメリカに輸出され、現在では南アフリカとアメリカのテキサス州がモヘアの世界的な産地となっています。

モヘアは長いアンゴラヤギの毛を使っているため通気性がよく、吸湿性に優れている特徴があります。ウールに比べてシャキッとした印象を持つモヘア。ドライタッチな肌触りのため、高温多湿の日本の気候にも合う素材です。

また、ウールと混紡したときには強い反発力を持ちシワになりにくいという特徴もあります。ただし、強い負荷がかかると折り目から裂けやすい性質を持つため、モヘアのスーツを作るときはタイトにしすぎないことが大切です。

ビキューナ

ビキューナはビクーニャの毛で作られる天然素材。ビクーニャは標高3,500m〜5,500mのアンデス山脈に生息するラクダの仲間。高地での生活に適応できるよう羊毛状の長い毛を持っています。毛の色は赤みを帯びた黄色や赤茶色ですが、白い毛も混ざってるのが特徴です。

かつては300万頭ほどいたビクーニャ。しかし、乱獲により1960年には史上最小となる5,000頭にまで減少してしまうのです。そこでペルー政府は保護区を制定してビクーニャの保護をはじめます。さらに30年ほど経った1994年、高級生地ブランドであるロロ・ピアーナが国際ビキューナ共同企業体を率いて現地の農家と契約。現地の農家に人道的な方法でビクーニャの毛を刈り取る権利を与えるかわりに、独占的に買い取る権利を得たのです。

このようにしてロロピアーナはビクーニャの保護を続け、2008年にはペルー初の私有自然保護区として「ドクター・フランコ ロロ・ピアーナ保護区」を設立。活動の甲斐もあり今では数多くのビクーニャが生息しているといわれています。

剪毛作業(毛の刈り取り)は2年に1回。1頭のビクーニャから取れる毛の量はわずか200g〜300gと非常に希少性の高い素材。ゴールドを彷彿とさせる光沢と相まって「神の素材」と言われることも。動物の毛を原料とした素材の中では最も細く直径は約12μm。最高級クラスのスーツの素材として扱われます。

カシミヤ

カシミヤはカシミヤヤギの毛で作られる天然素材。カシミヤヤギは中国、外蒙古、イラン、インド、アフガニスタンなどに暮らすヤギであり、インドのカシミール地方が名前の由来となっています。

14世紀のイスラム教指導者であるサイード・アリー・ハマドニが、カシミールの王様にカシミア製の靴下を献上したことがきっかけではじまったショールの生産。その後ショールは18世紀から19世紀にかけてフランスに渡り人気を得たのです。

カシミヤヤギが暮らすのは夏の酷暑と冬の極寒が毎年やってくる過酷な環境。このような環境で暮らすカシミヤヤギの毛は比較的細く、軽い生地を作れる特徴があります。保温性や保湿性にすぐれるだけでなく、独自のヌメリや光沢があります。

脂があるため、そして光沢があるのはキューティクル(毛を覆う無色透明のうろこ状のもの)の突起が少ないため。機能性や装飾性の高いカシミヤですが、毛玉ができやすいので着用頻度を低くするなど、取り扱いに注意が必要です。

コットン

コットン綿という植物の種子毛(しゅしもう)から作られる天然素材。細い枝に丸くできた種子毛はまるで白い花のよう。そのため、「綿花」と呼ばれることもあります。このような特徴を持つコットンは、どのようにして日本で広まったのでしょうか?

日本に初めてコットンが持ち込まれたのは8世紀末といわれています。基本的に暖かい地域での栽培に適しているコットン。当時の日本ではコットンを育てられず、中国からの輸入に頼らざるを得なかったそうです。

しかし、それではいつまでたっても価格が下がらず、コットンは高級な素材として扱われていました。時代がすすみ、ときは戦国時代。戦国大名たちが火縄銃の火縄や帆布用にコットンを使用するようになり需要が多くなっていったのです。その流れにあわせて寒い日本でもコットンを栽培できるようさまざまな工夫がされ、ようやく日本国内でも生産されるようになりました。

コットンには他の素材にないさまざまなメリットがあります。

一つ目のメリットは肌触りがいいこと。

見た目からも想像できる通り、コットンはふわふわしています。種子を守るための柔らかい毛を使っているため、肌に当たってもチクチクと感じることがありません。肌が敏感な方にはありがたい天然素材なのです。

二つ目のメリットは吸水性と通気性が高いこと。

特に化学繊維と比べると、吸水性と通気性が高いため1年を通してサラッと着られます。通気性と聞くと春夏用のスーツにしか使わないのかな?と思うかもしれませんが、そのようなことはありません。春夏用はもちろんのこと、秋冬用や3シーズン対応のスーツにも使われます。

三つ目のメリットは耐熱性が高いこと。

コットンには熱に強い特徴があります。そのため、アイロンをかけても生地が溶けたり軟化したりすることがありません。スーツのアイテムではありませんが、実は鍋つかみもコットンで作られています。鍋つかみを使ったことがある方なら、コットンがいかに熱に強いかおわかりでしょう。また、コットンはシワになりやすいというデメリットもありますが、アイロンを頻繁にかければ解決できます。

四つ目のメリットは染色しやすく発色性がいいこと。

コットンは明るい色に染色したときのヌケ感が抜群。明るい色をより鮮やかに見せたい時はコットンがいいでしょう。

五つ目のメリットは比較的安価であること。

天然素材の中では比較的安価なコットン。素材そのものの価格が安いことと縫製の手間が少ないことが理由です。スーピマ綿、エジプト綿、新疆綿(しんきょうめん)など一部高級なコットンがありますが、通常のコットンは比較的安価です。

スーツの素材としてコットンときくと、カジュアルスーツで使うイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?もちろんカジュアルスーツでも使われますが、ビジネスからフォーマルまで幅広く使えるのもコットンの特徴です。

また、ウールリネンより繊維が細く、年を重ねるほどに毛羽立ってきます。この毛羽立ちによりいわゆる味が出るのです。コットンでいう味とは、毛羽立ちによって光の当たり具合がかわりスーツに渋みのある影をつくること。ウールリネンの味が出るためには10年ほどかかりますが、コットンは3年ほどで味が出てきます。

しかし、味が出るのが早いということは生地の傷みも早いということ。味が出てきたら着用頻度を低くするなどして長持ちさせましょう。

リネン

リネンとはフラックスと呼ばれるの茎から作られる天然素材。綿以外の植物の総称であるため、その数なんと60種類以上。すべて覚える必要はありませんが、洋服に使われる代表的なを三つ紹介いたします。

一つ目はリネン日本国内のスーツを含む衣服市場では最も多いの種類です。の中では光沢感が比較的おさえられており、しなやかさも持ち合わせています。

二つ目はラミー。高い強度と光沢感の持ち主ですが、糸そのものに毛羽が多くシワ感が強いのも特徴です。

三つ目はヘンプ。日本名では大といいます。ときどき世間を騒がせているあの大と同じもの。しかし、日本産の大薬成分は少ないそうです。古くからしめ縄や紙(大紙)としても使われてきた歴史があります。空気を多く含むため、余分な湿気を発散させる作用もあるのです。

リネンにはさまざまなメリットがありますが、一番活躍するのが夏。リネンに含まれるペクチンという成分が汚れやニオイが生地に染み込むのを防いでくれるのです。また、肌触りも軽く密着しないので、高温多湿な日本の夏でも涼しく着られます。見た目の涼しさだけでなく機能性に富んだリネン。カジュアルスーツによく使われるイメージですが、ウールとの混紡であればビジネスシーンでも自然に着られます。

機能性に富んだリネンですが、シワになりやすいのが唯一のデメリット。長年の着用で体のラインに合ったシワを楽しむのなら別ですが、基本的にシワは避けたいもの。特にリネン100%の場合は要注意です。シワを避けてリネンを取り入れたい場合は混紡がオススメ。前述のウールとの混紡であればシワが目立たなくなり、ポリエステルとの混紡であれば伸縮性があるためそもそもシワがつきにくくなります。

アルパカ

アルパカはその名の通りアルパカの毛で作られる天然素材。意外かもしれませんが動物園にいるあのアルパカです。しかも年間160トンしか生産できない超高級素材なのです。そもそもアルパカが住むアンデス地方は、夏は40℃、冬は−20℃と寒暖差の激しい過酷な環境。そのような場所でも体を守るための毛ですので、優れた特徴を持っているのです。

アルパカの毛は非常に細くしっとりやさしい肌触りとなっています。また毛そのものが中空になっているため中に空気を含んでいます。この構造こそが寒い環境でも体を守れる秘密なのです。また、あたたかいだけでなく余計な熱を放出するという温度調整機能も備えています。

同じような特徴を持つカシミヤと比べると、繊維の強度が高く保温性が高いというメリットも。水に強く毛玉やシミができにくいという特徴もあります。

メリットの多いアルパカですが、唯一のデメリットは人によってアレルギー反応を起こしてしまうこと。スーツの生地としてアルパカを採用するときは、自分自身にアレルギーがないかよく確認しましょう。

レーヨン

レーヨンは木材パルプを原料にして作られる天然素材由来の再生繊維ポリエステルナイロンなどの合成繊維とは異なり、加熱処理することで自然に返すことのできる素材です。

1884年のフランス。一般市民のあこがれであったシルクは非常に高価で、裕福な貴族しか手にできませんでした。そこでシルクの代替材料として開発されたのがレーヨンなのです。

しかし、開発当初のレーヨンは非常に燃えやすく、レーヨンを素材とする衣服を着たファッションモデルに火が着くという事故も。のちに技術改良がなされて20世紀初頭には爆発的な人気を博していたのです。

1918年に帝人が製造をはじめたことが、日本におけるレーヨンの歴史のスタート。東レやクラレ(倉敷レイヨン)をはじめ多くの繊維会社がレーヨンの製造をはじめたのです。

レーヨンには次のようなメリットがあります。

一つ目のメリットは上質な光沢。長い繊維になるように加工されるため、シルクのような光沢を帯びた生地になります。レーヨンの名前のもとになったray(光)は、レーヨンが放つ光沢を指しているのです。

二つ目のメリットは通気性や吸湿性。通気性や吸湿性に優れているレーヨンは1年を通して活躍する素材です。特に高温多湿となる日本の夏において重宝されます。

三つ目のメリットはドレープ性。レーヨンは非常に柔らかく体の動きにあわせて広がったり、体のラインに沿って美しく波立ったりします。高級素材としても扱われ、スーツに使用すると体にフィットして優美な印象になります。

四つ目のメリットは価格。そもそもシルクの代替材料として開発されたのがレーヨンのため、天然素材と比較して価格が安いのが特徴です。

メリットが多いレーヨンですが、デメリットもあります。

一つ目のデメリットは水に弱いこと。水に濡れると繊維の膨張により繊維同士に引っ張る力がはらきます。そうなると繊維が縮んでしまうため、洗濯などの取り扱いに注意が必要です。

二つ目のデメリットは乾きづらいこと。吸湿性の高いレーヨンですが飽和状態(それ以上水分を含めない状態)になると乾きづらくなります。汗をかいたままレーヨンの衣服を着ていると汗冷えすることもあるのです。また、少量の水でもシミになりやすいため雨にも注意が必要です。

三つ目のデメリットはデリケートであること。アイロンはスチームを使わずに、布をあてながら低温でかけるようにしましょう。また、摩擦にも弱いためホコリなどの汚れを落とす時はやさしくはらうようにする必要があります。

四つ目のデメリットはシワができやすいこと。水に濡れると特にシワができやすくなります。そのため、洗濯後に長時間水につけたままにせず、すぐに乾かすようにしましょう。また、家庭で洗濯する場合は手洗いが原則です。

ポリエステル

ポリエステルは石油をベースにして作られる素材で人口ポリマー(人工的につくった高分子化合物)の総称。代表的な素材にポリエチレンテレフタラート(PET)があります。

1941年にイギリスで誕生したポリエステル。1957年に東レ(東洋レーヨン)と帝人(帝国人造絲)が共同でイギリスのICI社と技術援助契約を締結したことが、ポリエステルの歴史のはじまりです。ICI社はポリエステルの特許技術権を持っていたので、2社は特許技術を活用しながらポリエステルの工業化を進めました。

特許技術やノウハウの提供を受けた2社はさっそく日本国内にポリエステルの工場を建設。「テトロン」と名付けられたポリエステルの生産をはじめたのです。ポリエステルには染色が難しいというデメリットがありましたが、それを凌駕するメリットも持っていました。

熱に強くシワになりにくい、ブリーツ性(洗濯しても熱処理によってつけたスジやラインが消えない性質)がある、紡糸の手間がかからないためコストが低いなどさまざまなメリットがあったのです。その後、技術改良によって染色性が改良されると先に工業化されていたナイロンの市場に大きな影響を与えながら発展していきました。

ポリエステルを使ったスーツ生地にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

1つ目のメリットは速乾性があること。ポリエステルはスーツを含む多くの衣服に使われている素材です。特にスポーツウェアにおいて速乾性の高さは重要なメリットです。そのため、ポリエステルのスーツは自宅で洗濯や乾燥ができるのです。

2つ目のメリットは強度があること。天然素材より繊維が硬く反発力のあるポリエステル。そのため、シワになりにくく、シワになってもアイロンをかけるとすぐに元に戻る性質があります。比較的熱に強いので安心してアイロンにかけられるのです。

3つ目のメリットは色落ちしにくいこと。染色は130℃前後の高温・高圧の環境下で行うため、この環境にならないと色落ちしにくいと(脱色できない)という性質を持っています。

メリットの多いポリエステルですが、唯一の欠点があります。それは燃えやすく火に弱いこと。石油を原料にしているので非常に燃えやすく、火が付くとまたたく間に燃え広がるようです。スーツを着て火のそばに行くことはあまりないと思いますが、取り扱いに注意が必要です。

ナイロン

正式名称はポリアミド。合成繊維であり、歯ブラシのように硬い繊維から靴下のように柔らかい繊維までさまざまな太さや硬さに加工できます。もともとはシルクの代替材料として開発されました。

1939年のアメリカで商業生産が開始されたナイロン。しかし、ナイロンの元となるポリマーが開発されたのは1930年のことでした。9年間の改良を重ねてようやく世に出たのです。繊維としてすぐれた性質を持っているだけでなく、生産に多くの労働力を必要としたナイロン。そのため雇用を創出して世界恐慌を救い、化学繊維の発展に大きく寄与したのです。

ナイロンには次のようなメリットがあります。

一つ目のメリットは摩擦に強いこと。摩擦に対する強度はコットンの10倍、合成繊維の中でも摩擦に強いといわれているポリエステルよりもさらに強い特徴があります。

二つ目のメリットは軽いこと。天然繊維と比較すると軽く、合成繊維ポリエステルと比較してもさらに軽いのが特徴。軽めのタッチの生地に仕上がります。

三つ目のメリットは弾力性があること。力がかかっても元に戻ろうとする力が大きいナイロン。そのためシワになりにくいのが特徴です。

四つ目は耐久性が高いことです。引っ張る力に強い傾向があり、破れにくいのが特徴。水や油に対する耐久性も高く、カビも生えづらい特徴があります。ポリエステルも耐久性がありますが、衝撃に強いのがポリエステルであり引っ張りに強いのがナイロンです。

五つ目のメリットは乾きやすいこと。雨や水に濡れても乾きやすいナイロン。そのため、お手入れも比較的手間がかかりません。

メリットの多いナイロンですが、吸水性が低いため水分を吸収しません。また、熱にも弱いためアイロンをかけるときには布をあてるなど対策が必要です。日光にも弱く、経年劣化によって変色することもあります。静電気も帯びやすいため秋冬の着用時は注意してください。

もちろんスーツにも使用されるナイロン。しかし、ナイロン100%のスーツは基本的になく、ストレッチ性や耐シワ性を活かしてウールと混紡するのが一般的です。

ポリウレタン

ポリウレタンは天然ゴムの代用品として作られた合成繊維ポリウレタンが実用化されたのは1937年のドイツでした。軍事用にも使われるゴム製品。しかし、ドイツでは天然ゴムが採れなかったのです。そのため、人工的に作れるポリウレタンが重宝されました。

その後ポリウレタンを世の中に広めたのはアメリカのデュポン社だといわれています。アメリカではスパンデックスと呼ばれるポリウレタンですが、デュポン社ではライクラという登録商標を取得しています。

日本では1963年からアメリカとの技術提携により、本格的な生産がスタートしました。ポリウレタンだけではありませんが、歴史を辿っていくとそもそもの目的が軍事利用である製品は世の中に多くあります。

ゴムより軽量で強度もあり、高い染色性や伸縮性をもつ特徴があります。反対にコットンは高い吸水性をもっているが伸縮性に乏しい天然素材。コットンポリエステルを5%程度加えるだけで伸縮性のあるストレッチコットンとなるのです。

日本のジメジメした春夏シーズンに重宝されるコットンポリエステルとの混紡であれば、機能性が高く着心地のいい生地が作れます。シワに対する回復力も高いので、扱いやすい生地になるのです。

しかし、これほど機能性が高いポリウレタンにもデメリットがあります。それは天然素材に比べて寿命が短い傾向にあることです。ポリウレタンストレッチ性が寿命をむかえると、アイロンをかけてもクリーニングに出してもシワが取れなくなってしまうので注意が必要です。

ポリウレタン100%のスーツは基本的になく、コットンなどと混紡されるのが一般的です。

ベストの背面に使われる素材とは?

ベストに使われる素材はさまざまでした。しかし、紹介した素材はベストの表に使われるもの。ベストは表面と背面では使う生地が違うのです。

ベスト裏地の役割

ベストの背面にはジャケット裏地と同じ素材が使われます。そもそもジャケット裏地の役割は何でしょうか?

一つ目はスムーズに着脱すること。ジャケットは着脱の機会が多いもの。摩擦の少ない裏地をつけることで、着るとき(脱ぐとき)に引っかかることなくスムーズにできます。また、静電気を抑制する効果も期待できます。

二つ目は表地の保護。ジャケットを着ていると特に暑い季節は汗をかきやすいもの。しかし、裏地があることで汗が表地に伝わりにくいのです。また、型崩れ防止の効果も。表地と合わせて生地全体のボリュームが大きくなるため、型崩れしにくくなるのです。

三つ目はファッション性を高めること。裏地は表から見える部分ではありません。そのため、裏地にはこだわらない方も多いかもしれません。しかし、さっとジャケットを脱いだときに表地と雰囲気の異なる裏地がサッと見えれば、さいげないオシャレ感を演出できます。

スーツの裏地が背面の生地に使われるベストジャケットを着脱するときは同じ裏地どうしがこすれることになります。しかし、どちらも摩擦の少ない生地ですのでよりスムーズに着られる(脱げる)でしょう。

表地の保護に関しても、ベストを着用するとジャケット裏地がもう一枚増えるのと同じこと。かいた汗はより伝わりづらくなり、ジャケットの型崩れもよりしにくくなるでしょう。

そしてファッション性。ジャケット裏地は脱ぐときにチラッと見えるだけですが、ベスト裏地ジャケットを脱げば常に見えているもの。背中一面という非常に広い面積が見えるため、ファッション性の高さは抜群です。

しかし、ベストを脱いだときのことも考えて裏地を選ぶ必要があるため、色柄の選択には気を使うもの。ベストの表地と背面の生地が違うと派手だな、と思う方は表裏同一の素材(表地を背面にも使う)もありますので、検討してみてください。

キュプラとはどのような素材?

ベストの背面に使われる生地として多いのがキュプラキュプラとはどのような素材でしょうか?

19世紀後半に発明された比較的新しい素材であるキュプラ。当初は電球用のフィラメント(電球の中にある発光するための金属の線)として開発されましたが、残念ながらフィラメントとして売れることはありませんでした。電球のフィラメントにはタングステンなどの金属が使われていることからもわかると思います。

しかし、フィラメントの特許を取得したドイツのベンベルグ社はなんとキュプラを衣服に使用したのです。日本でキュプラが普及したのは20世紀半ば。1931年に日本窒素肥料(現在の旭化成、チッソ、JNC)がベンベルグ社と提携してキュプラの生鮮をはじめました。

綿花(コットン)の種の表面についている産毛のような繊維。長い繊維(リント)と短い繊維(リンター)があります。リンターを薬液につけて溶解し、また別の酸性の薬液で凝固させるとキュプラができます。

キュプラには次のようなメリットがあります。

一つ目のメリットは光沢があること。シルクのような上品な光沢があるキュプラ。その秘密は繊維の断面状。断面が円をした繊維のため、美しい光沢となめらかな肌触りを実現するのです。

二つ目のメリットは静電気を帯びにくいこと。キュプラは天然繊維のため静電気を帯びにくく、秋冬でも安心して着られます。

三つ目のメリットは吸湿性と放湿性があること。汗を吸って発散する特徴があるキュプラ。特に暑い時期に着るスーツの裏地に最適です。

四つ目はドレープ性があること。断面が円繊維は弾力と反発性の持ち主。生地にするとドレープ性を発揮することから、体のラインにフィットしやすくなります。

五つ目は熱に強いこと。キュプラはセルロースと呼ばれる繊維。衣服に使われる繊維の中においては熱に強い特徴があります。

六つ目は染色性が高いこと。この特徴はコットンゆずりの部分もありますが、原料となるコットンよりもさらに染色性が高いため、深く鮮やかに染まります。このようにキュプラジャケット裏地ベストの背面に使いやすい特徴を持っているのです。

しかし、メリットだけでなくもちろんデメリットもあります。シワになると回復しづらかったり、汗や雨がシミになったりします。ややデリケートで取り扱いに注意が必要です。

ベストの背面にはキュプラがよく使われますが、合成繊維ポリエステルが使われることもあります。

ベストに使われるボタンの素材

ベストジャケットに比べて構造が非常にシンプルなもの。ジャケットにおいてもボタンは重要なアイテムですが、ベストではより重要なアイテムです。ここではジャケットベストに使われるボタンを天然素材と人工素材にわけて紹介いたします。

天然素材のボタン

水牛

水牛はその名の通り水牛の角(一部は骨)を使って作られる天然素材のボタンです。天然素材のため二つとして同じものが存在しない希少性の高い素材。中身がつまった角の先端を輪切りしたものをタツ、空洞になった部分を開いて板状にしたものをイタと呼びます。

水牛はシックで落ち着いた色をしており、べっ甲のように美しいベージュ、きれいなマーブル模様が浮かぶブラウン、白いスジがサッと入るブラックなどがあります。同じ水牛でも色合いによって価格が変わり、透明感が高いほど高価になりブラックに近づくほど安価になります。価格の違いはボタンの素材となる部分の希少性の高さの違いです。

非常に見た目の美しい水牛ボタンですがデメリットもあります。それは水や熱に弱いこと。クリーニングはもちろんドライがオススメです。また、クリーニング後のホットプレスやタンプラー乾燥にも弱く表面の油が落ちて割れやすくなることも。取り扱いに注意が必要ですので、クリーニングするときは信頼できるお店に依頼しましょう。

ナット

ナットはエクアドル産のタグワヤシと呼ばれるヤシの実で作られる天然素材のボタンです。皮をむくと白い姿をみせるヤシの実。そのためボタンは象牙色をしており、アイボリーナットやベジタブルアイボリーと呼ばれることもあります。

水牛ボタンとの大きな違いは染色できること。もとの色が薄いため染色性も高いのです。よくある色は3種類で、パールのような光沢があるホワイト、コーヒーや紅茶のような色のブラウン、全体的にシックなブラックがあります。

ナットには天然由来の渦巻き模様があり、染色しても浮かび上がるのが特徴。染色された色と相まって非常にあたたかみのあるデザインとなるのです。

しかし、水に弱いというデメリットも。濡れたまま放置すると色が落ちたり、衣服に色が移ることもあります。そのため濡れたらすぐに乾燥させることが大切です。

シェル

シェルは貝殻をくり抜いて作られるボタンです。シェルは他の天然素材にはない独特かつ儚い輝きの持ち主。また、二つとしても同じボタンは存在しないため、いかにも天然素材といった印象を受けます。

ボタンに使われる貝は次の5種類です。

 ・高瀬貝:他の貝が二枚貝であるのに対して、高瀬貝は巻貝のため強度がある。やさしい白色。

 ・白蝶貝:真珠を育てる貝のため、宝石のようなボタンができる。ストイックに白を求めた純白。

 ・黒蝶貝:黒真珠を育てる貝であり、パールがかった光沢のある黒色。

 ・茶蝶貝:マベ真珠を育てる貝であり、あたたかみのある茶色。シェル特有のスジが入ることも。

 ・あわび:食用として人気のあわびはボタンにも使われる。シャンパンゴールドやスモークがかったグレーなど産地で色がかわる。

美しい光沢を放つシェルですが力や熱に弱いというデメリットがあります。割れやすいためクリーニングに出すときは注意が必要です。

人工素材のボタン

メタル

メタルはブラス(真鍮)などの金属から作られるボタンです。他の素材にはない高級感や重厚感があり、中には柄が刻印されているものもあります。現在では溶けた金属を肩に流し込んで固める「ダイキャスト」と呼ばれる製法が主流ですが、中には表パーツと裏パーツを折り曲げてとめる「かしめ」という方法で結合されているものも。この場合ボタンの中は中空ですので、ボタンがついている部分の布に負荷をかけたり、重みでボタンが下を向いたりすることもありません。

緻密な柄が刻まれていたり、エイジングによって味が出たりしているヴィンテージモデルもあります。

金属製の腕時計と相性がいいメタルですが、塩素系の洗剤や漂白剤に弱いというデメリットも。変色する可能性がありますので、取り扱いに注意が必要です。

ポリエステル

ポリエステルは石油を原料とした樹脂のボタンです。もしかするとポリエステルにチープなイメージを持っているかもしれません。しかし、天然素材にはない機能性をもち、天然素材に匹敵する質感をもつボタンもあります。そのうえ価格は天然素材より安価のため、選択肢のひとつとして考えるのもいいでしょう。

加工や染色がしやすく、天然素材と同じような色合いにすることも可能なポリエステル。縁の色だけを変える焼き加工など、魅せ方はさまざまです。

遠くからは天然素材と見分けがつかないボタンもありますが、わかる人が近づいてみるとポリエステルだとわかってしまいます。これが唯一のデメリットかもしれません。

ベストの着こなし

ここまで読んでくださったあなたは、ベストの素材やボタンについてかなり詳しくなったことでしょう。ここまではベストの知識を紹介してきましたが、ここからは実践編です。

着こなしの基本

具体的なコーディネートを紹介する前に、ベストの着こなしの基本を説明いたします。どのようなコーディネートも基本の考え方があるからこそ成り立っているもの。この後に登場するコーディネートを深くとらえて自分のものにするためにも、まずは基本を身につけましょう。

まずは、まだベストのコーディネートに自信が持てないという方向けの情報です。ジャケットスラックスベストはワントーンでまとめましょう。同じ色であればコーディネートの出発点で間違えることはありません。ワントーン……つまりスリーピーススーツを選ぶのです。

スリーピーススーツはすでにオシャレさが確立されたシステム。ベストをはじめて着る方はスリーピーススーツであれば、安心して着られます。

次は少し上級者向けの情報です。ベストオッドベスト)を単独で買う場合はスーツと同系色としましょう。「わざわざオッドベストを買うのならアクセントとして使いたい」と思う方もいるかもしれません。着るシーンがカジュアルであるならそれでも問題ありませんが、ビジネスの場合は同系色にして全体の統一感を持たせましょう。

さらに上級者向けの情報を紹介いたします。色が多いと統一感がなくなってしまいますよね?たとえばジャケットネクタイの色が異なる場合は、中間色のベストを選びましょう。柄についても考え方は同じ。ジャケットネクタイがどちらも柄物であり柄が異なる場合は、控えめの柄のベストを選びましょう。つまりベストがコーディネート全体のクッションとなるのです。

ネクタイの合わせ方も重要です。レジメンタルストライプやドットなどを取り入れると、英国風のシャキッとしたスタイルになり全体をまとめやすくなります。ベストを着るとVゾーンが狭くなるもの。そのため、Vゾーンが広いツーピーススーツでは目立ちすぎる柄も、ベストと合わせると着やすくなります。ペイズリー柄など少し派手めの柄に挑戦したいときにオススメです。

スーツとベストの色違いはありか?

スーツとベストが色違いであっても、基本的にはマナー違反ではありません。スリーピースのスーツを選べばベストは同色になりますが、色違いでも場違いになったりマナーにそぐわなかったりしない限り問題はありません。

例えばビジネスシーンで、グレーのスーツにネイビーのベストを合わせてもスタイリッシュに着こなせます。カジュアルなシーンであれば、スーツと色違いのベストで自由にファッションを楽しめます。スーツが無地であれば、チェックやストライプなど柄物を合わせるだけで、いつものスーツスタイルのイメージが変わります。

 ベストを使ったコーディネートは、普段からスーツを着慣れている男性ならではのファッションです。色違いのベストを使って、スーツスタイルを自由なコーディネートで楽しみましょう。

スーツとベストを色違いにする場合のポイント

スーツとベストの色を変えると、ベストは脇役ではなく主役に変わります。かっこよく色違いで合わせるなら、スマートに着こなしたいところです。 ではここからは、スーツとベストを色違いにする場合のポイントをみていきましょう。

スーツとベストを同系色にする

落ち着いた印象で着こなしたいなら、ベストはスーツと同系色または色の濃淡をつけるのがオススメです。同系色でまとめると、ビジネスシーンの会議や商談などでも違和感なく着こなせます。 ただし、あまりにも色合いがかけ離れてコントラストが強すぎると、場違いになることもあるので、色の合わせ方は適度に加減しましょう。

スーツとは違う色で合わせるのに抵抗がある場合は、まずは同系色のベストを合わせれば間違いありません。ぜひ試してみてください。

スーツとの配色を意識する

ベストはスーツの色の濃淡や同色系で合わせるのが一般的です。スリーピーススーツのように、同素材のベストなら迷うことなく合わせられます。

しかし、スーツと同系色を選ばずに、ベストを目立たせるような色のコーディネートを楽しんでみてはどうでしょうか。スーツと違う色合いのベストを使うと、スーツのコーディネートの幅はグッと広がります。スリーピーススーツよりもコーディネートの難易度は上がりますが、うまく着こなした時は各段かっこよく見栄えがします。

色使いに気を付けて、スーツの色と相性のいいベストを選んでください。

柄ものでコーディネートする

無地のスーツに柄もののベストを合わせると、おしゃれ感が上がります。スリーピーススーツにはない、個性的なコーディネートでベストを引き立てます。

スーツと同系色のチェック柄やストライプ柄は、英国紳士スタイル風のコーディネートになります。花柄やペイズリー柄は、パーティーなど華やかな演出をしたい時におすすめです。

柄ものは手が出しにくいという方でも、チェックやストライプなど親しみのある柄から楽しんでみてはいかがでしょうか。

スーツに合うベストの選び方

おしゃれに着こなせるベスト選びのポイントは、スーツに合うベストを選ぶことです。男性はベストを普段使いして、ファッションを楽しむ場面もあるでしょう。そこでここからはスーツに合うベストの選び方をご紹介します。

素材で選ぶ

ベストは、スーツの素材感に合わせて選ぶことがおすすめです。スーツにはウールナイロンポリエステルなどの、さまざまな素材が使われています。

ナイロンポリエステルの素材は、春から秋に着用することが多いでしょう。ナイロンポリエステルのスーツに厚手のウール素材のベストを合わせると、季節感が合わないだけでなく見た目もやぼったい感じになってしまいます。やはり、ウールのスーツにはウールベストを合わせると、違和感がなくしっくりきます。

また、シルクのような光沢のある素材は結婚式などのフォーマルなシーンでは使えますが、ビジネスシーンではベストだけ浮いてしまいますので注意したい素材です。ベストの素材選びは、スーツの素材とかけ離れないように選びましょう。

色で選ぶ

スーツと合わせやすいカラーといえば、ブラック、ネイビー、ブラウンの3色。この3色はスーツやジャケットと色違いでも合わせやすいカラーになっており、汎用性が高いためおすすめです。

ネイビーやグレーのスーツを持っている方には、ブラウンのベストが一枚あると便利です。ブラウンはネイビーやグレーとの相性がばっちりです。また、スーツと同系色のベストで濃淡をつけたコーディネートも、ビジネスシーンでも使える落ち着いた着こなしができます。着回しのしやすい、ブラック、ネイビー、ブラウンの中から選んでみてはどうでしょうか。

ボタンで選ぶ

ベストボタンは、シングル(縦1列)とダブル(縦2列)があります。ビジネスシーンで着るスーツに合わせるなら、シングルのベストがおすすめです。

ビジネスマンであれば会議や取引先への訪問などの場面でも、シングルのベストの方がすっきりとした印象になります。ビジネスシーンで、きちっとした印象を与える効果を狙うこともできます。

 ダブルベストはフォーマルなシーンでドレッシーな雰囲気が演出できるので、パーティーなどで華やかに着こなしたい時におすすめです。ダブルはフォーマルなシーンで使われることが多く、どちらかというとおしゃれ着の印象があります。少しクラシカルなイメージもあるので、日常の着こなしに新しさをプラスしたい時にも使えます。

 会議や商談などに出席することも多いビジネスマンならシングル、フォーマルなシーンで華やかに着こなしたいならダブルです。シングルまたはダブルのどちらがいいのかは、着ていく場所やシーンによって選びましょう。

のデザインで選ぶ

ベストがあるタイプとなしを選べます。 なしのベストは、一般的なスーツと合わせやすい傾向があります。スーツの中にベストを着ても、が重ならないのでVゾーンがすっきりとまとまります。

ありのベストはフォーマルな場面に向いていて、多少着こなしの難易度は上がります。しかし、クラシカルな雰囲気のコーディネートができ、なしにはない魅力があります。結婚式やパーティーなどで華やかに見せたいなら、断然があるタイプのベストがおすすめです。

マナーとしてはスーツに合わせるなら、どちらでも構いません。なしのベストはどんなスーツとも合わせやすいメリットがあり、があるタイプのベストは主張が強いですが上級者の着こなしを目指せます。

自分の体型にあったサイズで選ぶ

かっこよくベストを着こなすなら、自分の体型に合ったサイズ感で選ぶことが大切です。デザインに目がいきやすいですが、サイズも重要なポイントです。

ベストの丈

ベストの丈は、ウエストが隠れるくらいがベストです。ベルトが見えるくらい丈が短いと、シャツがチラチラと見えてだらしない印象になります。ベストパンツの間からネクタイが見えるのも見栄えが悪くなるので気をつけましょう。

ベストの丈が長すぎるのも、胴長にみえてバランスが崩れてしまいます。ベストパンツの繋がりが自然になるように、バランスよく着こなしてください。

身幅

身幅はからだにフィットし、動きやすいくらいの余裕を持つことがポイントです。 余裕がありすぎるとベストのスタイリッシュ感がなくなってしまいます。 反対に小さいサイズだと、窮屈な印象になっておしゃれとはいえなくなってしまいます。 それに座ったときにシワができてしまうので注意しましょう。

ベスト身幅がからだに合っていると、スタイルをよりよくみせてくれます。 ベストのサイズはからだにフィットして、シャツが見えない丈を選ぶことがポイントです。

 アームホール

アームホールは脇が開きすぎることなく、適度なゆとりが保てるくらいが理想です。脇に食い込んでしまうようでは、見ためにもよくありませんし動きにくくなってしまいます。目安としては、着用するシャツのベストアームホールの直径が同じくらいになるとちょうどいいサイズ感になります。

スーツとベストはフィット感にこだわり、お腹や背中からシャツが見えないものを選びましょう。

ベストの着こなしのコツ

スーツを着る機会は多くても、ベストを合わせるとなると抵抗がある方もいるかもしれません。 しかし、ベストをかっこよく着こなしてみたいと思いませんか?ここではベストの着こなしのコツをご紹介します。

Vゾーンを魅力的に見せる

ベストを着こなす上で、いかにVゾーンを魅力的に見せるかがポイントになります。Vゾーンとはベストの首元にある逆三角のゾーンのこと。なぜ、Vゾーンの見せ方が大切なのでしょうか?ここでは例をあげながら、体型とベストのVゾーンの関係について説明いたします。

体型別に見ていきましょう。細身の体型の方には、Vゾーンが浅めのベストがおすすめです。ベストが加わることで、胸周りをよりたくましく立体的に見せられます。反対にふくよかな体型の方は、Vゾーンが深めのベストを選ぶといいでしょう。胸元にゆとりを持つと、すっきりとした印象になります。

スーツとベストのコーディネートは、Vゾーンの見せ方が大切です。体型に合わせてVゾーンを加減することで、より魅力的な着こなしができます。

の有無も体型によって使い分けられます。細身の方は首も細いことが多いでしょう。そのような方はがあるタイプのベストを着ることで、首元に厚みをもたせられます。反対にふくよかな体型の方はすでに首周りが立体的です。そのような方がのあるタイプのベストを着ると首元がつまって見えてしまうのです。ふくよかな方はなしのベストを着て、首元をすっきり見せましょう。

スーツとベストの色合いにメリハリをつける

スーツとベストの色合いを変えると、ベストが際立ち主役級の役割を果たしてくれます。スリーピーススーツのようにスーツの色と同じでもおしゃれ感はでますが、ベストに差し色を持ってくるといっそうこなれ感がでます。

スーツが濃い色合いならベストを淡い色合いにする、また、スーツが淡い色合いならベストを濃い色合いにするなど、コーディネートにメリハリをつけてみましょう。ベストをオシャレに着こなしたいなら、スーツとベストの色合いにメリハリをつけてみましょう。

スーツとベスト全体の色使いを3色までにする

スーツとベストを合わせる時の色数は、2色まで。多くても3色までに抑えるのが原則です。これ以上になると見た目がうるさい印象になってしまいます。

例えばスーツがグレーでシャツが白、ネクタイがネイビーなら全部で3色です。ここにベストが入るなら、スーツと同系色だとすっきりまとまります。ベストを差し色にして茶系にするなら、スーツとネクタイの色合いを同系色にすると調和が保たれます。

身につける色を3色までに絞って、統一感のある洗練された着こなしを心がけましょう。

シャツの先はベストで隠す

うっかりやってしまうなのが、シャツの先がベストから出てしまうことです。わざわざおしゃれに着こなしても、先がベストから出ているだけで全体的にだらしなくみえてしまいます。

先を隠すためにはの開きが大きいデザインのシャツを選ぶといいでしょう。「ワイドカラー」や「ホリゾンタルカラー」がおすすめです。ワイドカラーの角度が100~140度くらい大きく開いており、ホリゾンタルカラーはさらに広くほぼ水平な180度に近いタイプになっています。

ショートポイントやボタンダウンは、先が隠れないデザインなので避けてください。正統派の着こなしをしたいのであれば、の開きがおおきいシャツを着てベストの下に隠れないようにシャツのの開きで調節しましょう。

ベストの一番下のボタンは留めない

ジャケットでも同様な決まりがありますが、ベストの一番下のボタンは飾りという位置づけなのでベストの場合も留めません。一番下のボタンを留めてしまうと余計なしわが入り、シルエットが崩れる、苦しいなどの理由があります。

これらのことから、留めないというスーツファッションのマナーがあるとされています。

ベストを着ている時のジャケットボタンマナー

スーツの下にベストを着た場合、ジャケットボタンは留めるべきか?開けたままでもいいのか?意外にわからなくなってしまうのではないでしょうか。ボタンがたくさんあるため迷ってしまいます。

ベストを着ている時のジャケットボタンは、先ほどの解説と同じくアンボタンマナーを守って一番下は留めません。しかしパーティーや食事会などの場面では、ジャケットボタンをすべて開けた状態でも構いません。

 ジャケットボタンを外すとベストが引き立ち、粋でおしゃれな演出ができます。シーンに合わせたボタンマナーで、着こなしを楽しみましょう。

ベストに合うシャツの

ワイドカラー

ワイシャツには種類があります。

 ・レギュラーカラー :フォーマル

 ・ワイドカラー   :ビジネス

 ・ホリゾンタルカラー:ビジネス

 ・ピンホールカラー :フォーマル、ビジネス

 ・ボタンダウン   :カジュアル

ビジネスでよく使われるワイドカラーについて少し説明いたします。

ワイドカラーが100°〜140°と最も広く開くのが特徴です。それに対してレギュラーカラーは75°〜90°。の開きが大きいほどカジュアル寄りにはなりますが、ワイドカラーはビジネスでも使えるワイシャツです。また、が大きいほど首元がすっきり見えて小顔効果も期待できます。そのため、肩幅や体格ががっちりした方にとくにオススメします。

ワイドカラーには「ウィンザーカラー」という別名も。20世紀初頭に男性ファッションに大きな影響を与えたウィンザー公が好んで着ていたため、この名前がつけられたといわれています。

ピンホールカラー

ピンホールカラーが他のワイシャツと大きく異なるのは、カラービンの使用を前提としたワイシャツであること。それではカラーピンとは何でしょうか?

カラーピンの説明の前にネクタイについて少し説明いたします。ネクタイはスーツの中でも目立つため、首元にアクセントを与えてくれる重要なアイテムです。しかし、昔のネクタイは今ほどボリュームがなかったといわれています。その理由はネクタイに芯地を入れるノウハウがなかったため。加えてネクタイの素材となっていたシルクそのものの厚さもなく、ネクタイを締めても首元が貧相に見えたそうです。

そこで首元を華やかに見せるために考えられた方法がネクタイを持ち上げること。それではどのようにネクタイを持ち上げるのでしょうか?

ネクタイを持ち上げるにはカラーピン(のピン)を使用します。ネクタイの結び目の裏に真横(水平)にカラーピンを通して、ネクタイを持ち上げるのです。しかし、カラーピンはどこに留めるのでしょうか?正解はシャツ(ピンホールカラー)のに空いた穴です。

ピンホールカラーにはカラーピンを通す穴が空いており、カラーピンの使用を前提としています。そのため、クールビズなどネクタイを締めないスタイルは基本的に選べません。

持ち上がったネクタイによる首元の立体感、カラーピンそのものの華やかな質感に加えてネクタイの結び目が緩まない効果など多くのメリットがあります。また、古くからイギリスで使われている由緒正しいアクセサリーのため、英国紳士風のスタイルに仕上げたい方必見のアイテムなのです。ピンホールカラーは顔が小さめで首が長い方がとくに似合います。

ボタンダウンはNG

の先にボタンがついたワイシャツを見かけることはありませんか?きちんと感が出ており、いかにも仕事ができそうですよね?しかも、クラシカルな雰囲気もあります。

しかし、待って下さい!実はベストボタンダウンの相性はそれほど良くありません。

スーツやベストはイギリス発祥のクラシカルなワイシャツ。対してボタンダウンはアメリカ発祥のカジュアルなワイシャツなのです。アイビールックで有名なアメリカの「ブルックスブラザーズ」発表するとまたたく間に世界中で人気になったのががボタンダウンそもそも発祥が違うスタイルを混ぜるのはナンセンスかもしれません。

意外に知られていない着こなしネタ

ベルトではなくサスペンダーを使う

きれいな曲線美を描くベスト。胸からウエストにかけてキュッとしぼられ、スラックスにむけてふたたび広がっていく。砂時計のようなくびれと広がりがあるのが、きれいなベストの特徴です。しかし、ベストを着てベルトを締めると、スラックスへの広がりの途中でベルトが浮き上がり、シルエットが崩れてしまうことがあります。

そこでオススメなのがサスペンダーです。イギリスではブレイシーズと呼ばれるサスペンダーベストの曲線美を崩さずスラックスを釣り上げてくれるため、ベルトよりきれいにスーツを着られます。ベルトウエストを締め上げる必要がないため、スラックスウエストを詰める必要もありません。

「肩にかかったベルトがどうも苦手だ」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、ベストを着ればサスペンダーベストの下に隠れてしまいますので安心してください。

職場の事情などでベルトを締める必要がある方もいらっしゃるでしょう。そのような方はベルトそのものやバックルが細いものを選びましょう。ベルトが細ければベストの曲線美にあたえる影響も少なくて済むでしょう。

また、ベストの下からバックルが見えるのはナンセンス。バックルの位置を左右どちらかにずらして、ベストの下に隠してしまいましょう。このときバックルが小さい方が、その状がベストに浮かび上がらないためいいのです。

ネクタイベストの中で折り返す

ネクタイは結んだときに小剣(細い方)と大剣(太い方)の長さのバランスがいいと、スタイリッシュに見えます。しかし、身長によっては大剣がスラックスベルトラインより下になってしまう方も。そのようなときはどのようにすればいいのでしょうか?

よく見かけるのは剣先をスラックスの中に入れてしまう方法です。お腹とスラックスの間にさっと入れるだけですので、お手軽な方法です。しかし、この方法だと電車のつり革につかまるときなど、上半身を伸ばすと剣先が外に出てしまうのです。ふたたびスラックスの中に入れるのもいいですが、都度行うのは面倒なもの。そこでオススメの方法があります。

それは大剣をベストの中で折り返すこと。折り返した大剣をベストとお腹で挟んでしまうのです。これでベストの下にネクタイ(大剣)がチョコッと顔を出すこともなく安心して着られます。

ノーネクタイはNG

ベストをノーネクタイで着るとどんな感じだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?

ベストをきるときちんと感が出てスタイリッシュに見えるもの。ネクタイを締めなくても様になると思うかもしれません。

しかし、ノーネクタイベストを着るのはやめましょう。ボタンダウンと似たような話ですが、ベストはクラシカルでフォーマルなスタイル。しかし、ノーネクタイはカジュアルなスタイルのためベストとの相性はよくありません。

クールビズなどノーネクタイのスタイルではそもそもベストを着ない方が無難です。冷房が効きすぎていてベストを着ればちょうどいいときは、ネクタイも一緒に締めるようにしましょう。

ノータックもNG

最近ではノータックスラックスもめずらしくなくなりました。そのため、ノータックスラックスを履いていてもあまり違和感はないのかもしれません。しかし、ベストを着るときだけでもタックのあるスラックスを履いてみませんか?

ノータックは本来デニムチノパンなどカジュアルなパンツのデザインとして使われるもの。しかし、スーツ発祥の地であるイギリスではタックのあるスラックス(トラウザーズ)が基本なのです。ベストを着るときはぜひタックのあるスラックスを履きましょう。

ワンタックでもOKですが、ツータックならよりクラシカルな雰囲気を演出できていいでしょう。また、タックがあることでスラックスをゆったり履けるというメリットもあります。

シーン別ベストの着こなし術

ビジネス

ビジネスシーンで着るスーツの定番カラーはネイビーやグレー、それにブラウン。無地が基本ですが、シャドーストライプやドットなどさりげない柄であれば着用してもOKです。オフィスで自分の机に座って仕事をする方はジャケットを脱ぐ機会も多いことでしょう。ベストだけの姿になることも考えてスーツの色や柄を選びましょう。

かつてのイギリスではワイシャツが下着でした。当時のワイシャツは現代のものより裾が長く、股の下で留められるようにボタンがあったのです。スーツが日本に入ってきたころには「ふんどし」があったため日本では普及しませんでしたが、イギリスでは名実共にワイシャツは下着だったのです。

人前で下着姿にならないために着ていたベスト。現在ではワイシャツを下着と考える方は少ないと思いますが、ベストを着ていればワイシャツだけの姿よりスタイリッシュな装いに。無地の薄いグレーのベストは使える場面が多く一着あると便利です。

フォーマル

フォーマルシーンはビジネスシーンと異なりブラックのモノトーンで統一するのが無難です。ジャケットスラックスと同じ素材・色・柄のベストを選びます(スリーピーススーツ)。ジャケットを脱いでもフォーマル感とオシャレ感をキープできるようにしましょう。

結婚式

結婚式でベストを着ると落ち着いていてフォーマルな場面に合う装いとなります。かつては礼服で結婚式に出席する方が多かったのですが、最近ではスーツで出席しても不自然ではありません。また、結婚式ならではのスタイルを楽しめるのも醍醐味でしょう。

たとえばペイズリー柄のネクタイはビジネスで使うのは少しためらうもの。しかし、結婚式などお祝いの席であれば少々派手でも気にならないかもしれません。ただし、結婚式の主役の一人である新郎より目立たないように気をつける必要があります。

そのためにあまり光沢のないシンプルな生地を選ぶといいでしょう。2種類以上の色柄を取り入れてコーディネートを楽しむのもいいですが、自信がなければモノトーンでも問題ありません。主役をお祝いする気持ちを持ちながら、そのときにしかできない自分なりのオシャレを楽しみましょう。

パーティー

結婚式以上に個性を出せるのがパーティー。パーティーでは結婚式のようなお祝いムードのなかにあるかしこまったスタイルではなく、くだけたスタイルでOK!使うシーンが限られている蝶ネクタイや、ビジネスでは使いづらいポケットチーフを合わせることもできます。パーティーは個性を全面に出せる貴重なシーンなのです。

カジュアル

プライベート(カジュアル)でベストを着るときにはまったく制約はありません。スリーピーススーツでなくても構いませんので、お好みの色・柄・素材のベストを合わせられます。しかし、どのようなベストを合わせればいいのか迷いますよね?オッドベストを使ったコーディネートを後述しますので、参考にしてみてください。コーディネートのセンスを磨けば、よりオシャレを楽しめるようになります。

インナーに必ずしもワイシャツを着る必要はありません。カットソーやTシャツなどコーディネートの幅は広がります。ただし、スーツに使われるベストをそのままカジュアルで着ると違和感があるもの。色・柄・素材・サイズなど、リラックスしたカジュアルシーンにピッタリのオッドベストがあります。

ベスト着用NGのシーン

リクルート(就職活動、転職活動)

さまざまなシーンで活躍するベストですが、その一つがリクルート(就職活動・転職活動)です。リクルートの面接は「応募した企業に自らがふさわしい」とアピールする場。企業は組織の中に溶け込んで長く活躍してくれる人材を探しています。そのような場面で威厳や落ち着きを感じさせるベストを着ていると、面接官に「生意気だ」と思わせてしまうことも。

どれだけ能力があっても面接の場でそれを面接官が理解するのは難しいものです。そのため、服装を含めてあらゆる情報をもとに合否を判断するのです。他の点に問題はなく、服装にさえ気をつかっていれば受かることもあるかもしれません。アパレル業界の企業など、特殊な場合をのぞいてリクルートの面接ではツーピーススーツを着用するようにしましょう。

葬儀

葬儀でもベストを着用してはいけません。礼服が基本的な装いですので、スリーピーススーツでの参列はNGです。葬儀は故人を偲んだり遺族への思いやりを表現する場です。冠婚葬祭の中でも葬儀はとくに気をつかうことが多い場。場の雰囲気を無視したコーディネートはマナー違反となります。喪主の方や他の参列者に「常識を知らない人」と思われないよう気をつけて下さい。

初対面の人と会うとき

とくに営業など社外の人と会う機会が多い職種の方は気をつけてください。はじめて会う社外の方が目上の場合は多くあるはずです。ベストを着ているとリクルートと同様の初対面の相手から「偉そうだ」と思われることも。慣れてくると相手との関係や相手のコーディネートなどがわかると思いますが、ベストを着るかどうかの判断は難しいもの。相手に余計な感情を抱かせないためにも迷ったら着用しない方が無難です。

スリーピーススーツのおすすめコーディネート例

ここからはいよいよコーディネートを紹介していきます。はじめに紹介するのはスリーピーススーツのコーディネート。スリーピーススーツですので、ジャケットスラックスベストと同じ生地や色柄であることが前提です。すぐに取り入れられるスタイルもありますので、参考にしてみてください。

ネイビーのベスト×青のシャツ×赤のネクタイのオールラウンダーコーデ

ネイビーは誠実さやフレッシュ感といった印象を与える色。無地であればその印象をより強くできるでしょう。ベストに合わせるワイシャツはもっともオーソドックスな白もいいですが、サックスブルーならより爽やかな印象に。さりげない光沢があると誠実さと華やかさを取り入れたバランスのいいコーディネートになります。ベストは無難になしのシングルでいきましょう。

ネクタイはネイビーをベースにした赤のレジメンタルストライプを合わせるといいかもしれません。ジャケットスラックスベストネクタイのベースまでネイビーで統一された世界観の中で、ネクタイに入る赤のラインがビジネスシーンでデキる男を演出してくれます。ポケットチーフをあしらえば、そのままパーティーに参加してもおかしくない雰囲気に早変わり!ネイビーは幅広く使えるオールラウンダーなのです。

ネイビーのベスト×白のシャツ×赤のネクタイポケットチーフコーデ

ダブルのネイビーのベストジャケットのネイビーと相まって躍動的であるにもかかわらず、随所ににじみ出るきちんと感。現在のスタイリッシュなスーツと、かつてのクラシカルな軍服のコラボレーションといってもいいかもしれません。

きちんと感の強いスタイルに合わせるのは白のワイシャツ。白はきちんと感を損なわずに開放感をつくるオーソドックスな色です。しかし、さらに開放感を強めてくれるのが赤のネクタイ。柄は無地で構いません。

同じく無地のベストと合わせれば首元に華やかな存在感を示してくれます。胸にネクタイと同色のポケットチーフをあしらってもオシャレでしょう。

ビジネスシーンでポケットチーフはやや遠慮してしまうもの。しかし、ジャケットの胸ポケットの歴史を紐解けばその心配は無用です。

かつてジャケットには胸ポケットがなかったといわれています。当時の男性がパーティーに参加したとき、ハンカチを持っている女性をみかけて「自分たちもハンカチを持ちたい」と思ったのがはじまり。その頃はハンカチをいれるポケットがなく、口などに隠していたといいます。ハンカチを入れるために誕生したのが、ジャケットの胸のポケットなのです。

ポケットはハンカチ(ポケットチーフ)を入れるためにあるものですので、自信を持ってポケットチーフを楽しんでください。ただし、ポケットチーフをつけていると「生意気だ」ととらえる人もいるでしょう。スーツの基本は周囲の方への感謝と敬意ですので、組織の雰囲気も大切にしながら楽しんでみてください。

ネイビーのベスト×ストライプシャツ×ベージュのネクタイのやさしさ満点コーデ

柄はスーツやネクタイだけで楽しむものではありません。やや個性的になるかもしれませんが、ネイビーのベストにストライプのワイシャツを取り入れるのもGOOD。ブルー×白のストライプシャツは抜群の爽やかさがあるため、濃いめのネイビーなどやや重い色のベストにも合います。

柄は無地でもいいですが、シャドーストライプにするとワイシャツとの世界観が統一されてワイシャツの柄だけが浮いて見えることもありません。ネクタイに見た目のボリュームがありますので、なしシングルのシンプルなベストが合うでしょう。

ただし、ペンシルストライプなどはっきりしたストライプにすると、ワイシャツの柄と相まって全体的ににぎやかになってしまうため注意が必要です。

ネクタイはラインが太めのネイビー×ベージュのレジメンタルストライプにするとやさしい雰囲気を演出できます。ネイビーやブルーの世界にふとベージュが入ることで、単純に仕事ができるだけでなく寛容な人間性を表現できるのです。

ネイビーのストライプベスト×グレーのシャツ×青のドット柄ネクタイの躍動的な大人コーデ

同じネイビーでも無地とストライプでは印象が異なるもの。無地のネイビーは誠実感や真面目さを感じさせますが、ストライプのネイビーは誠実感の中にある原動力を感じさせます。ベスト状はがないタイプのシングルにしましょう。ボタンの縁の色をストライプの白と合わせれば、一列に並んだ配列と相まってオシャレな統一感を表現できます。

ネクタイは青をベースとして白のドット柄がいいでしょう。これもドットの色とストライプの白がリンクすることで、伏線を回収する小説のような納得感があります。そしてワイシャツは薄いグレーがいいでしょう。白も悪くありませんが、白だとネイビーの濃さによっては開放感が強くなってしまいます。濃いネイビーの場合はワイシャツを薄いグレーにして、調和の取れた開放感を表現しましょう。

最後に一つだけ注意点があります。ベストの裾からベルトのバックルが見え隠れすると、統一された世界観が損なわれてしまいます。前述のようにサスペンダーを使用するか、バックルの位置をずらしてベストの下に隠れるようにしましょう。

グレーのベスト×白のシャツ×青のネクタイのメリハリコーデ

スーツのコーディネートの基本は、シックに引き締める部分とライトに開放感をもたせる部分のメリハリをつけること。グレーのベスト×青のネクタイは、わかりやすい例かもしれません。

体全体を引き締めるグレーは、どの時代にもあるクラシカルな雰囲気や重厚感の持ち主ですが、やや重めの印象になることも。そこで青のネクタイを締めて首元に開放感をもたせることで全体のバランスを整えるのです。スーツの柄は無地でもいいですがチェックなどさりげない柄があると、ややライトな印象になります。

ワイシャツはオーソドックスな白にして、ネクタイの青×ワイシャツの白で爽やかな雰囲気を作りましょう。落ち着きと威厳の中にある躍動感を表現できるコーディネートとしてオススメです。

グレーのウィンドウペーンベスト×青のシャツ×赤のネクタイの3色オシャレコーデ

スリーピーススーツに柄を取り入れたい。しかし、定番のストライプではない柄がいい。

そのような希望をお持ちの方にオススメなのがグレーのウィンドウペーンベストです。ウィンドウペーンはややカジュアルな柄。ブラウンであれば色と相まってよりカジュアル感が出てしまうのが懸念点。

そのようなときは、グレーのウィンドウペーンにすることでカジュアルすぎずストライプ以外の柄を楽しめます。グレーという色の特性上、ブラウンほど柄が目立たないためです。

とはいえ、無地やシャドーストライプに比べるとやや存在感はあるため、ベストはシングルにして前面のセンターをすっきりさせましょう。ベストなしでもいいですが、開放感をつくる青のシャツとのつなぎ役としてがあるタイプのベストの方が向いているかもしれません。

グレーのウィンドウペーンというやや重めの色・柄に開放感を与えるのは青のシャツと赤のネクタイ。青はサックスブルーのような爽やかな色とし、ネクタイは燃えるような赤ではなく「えんじがかった赤」がいいでしょう。落ち着いた色のネクタイにすることで、グレーのベストとの統一感を作れます。また、ジャケット裏地ベストの背面)を赤にしてネクタイと統一するのもオシャレです。

ブラックのベスト×白のシャツ×白のネクタイシックに決めるお祝いコーデ

結婚式などに出席するときのフォーマルなスタイル。ネイビーや白のベストもいいですが、オーソドックスなのはブラック。柄はもちろん無地にして、適度に光沢があるデザインがいいでしょう。純白のように白いワイシャツを選ぶとベストとのコントラストがきれいになります。ネクタイも白にしましょう。ただし、ワイシャツの白とは風合いが異なるとオシャレです。

パールがかった白のネクタイを締めると首元がやさしい雰囲気に。フォーマルな中にも人の温かみを感じさせるコーディネートの完成です。ベストはシングルの方がすっきり見えてオススメ。はなくてもかまいませんが、あるとよりフォーマルに見えます。

ブラックのラペルベストは他の色と比べて、のラインが目立ちにくいもの。普段はなしのベストを着る方や、にやや抵抗がある方でもスッキリ着られます。

グレーのベスト×白のノーカラーシャツ×グレーの蝶ネクタイのスペシャルシーンコーデ

ブラックよりやや華やかになるグレーのベスト。結婚式に出席するときはビジネスで着用するグレーのスーツより光沢があるものがいいでしょう。光沢のあるグレーは白いシャツと合わせると、引き締め感と開放感が逆転した印象に。通常、グレーは引き締め感のある色です。しかし光沢があると開放感が強くなり、反対に白いシャツの方が引き締め感があるように見えます。

ネクタイをつけたノーカラーシャツであればなおのこと。一列に並んだブラックのボタンも全体の引き締めを手伝っています。胸に白のポケットチーフをあしらうのも、結婚式のような限られたシーンの特別なオシャレでしょう。

スーツとベストが色違いのおすすめコーディネート例

スーツとベストが色違いのコーディネートは少し難しいイメージがあるかもしれません。ここからはどんな風に着こなしているのか、実際にスーツとベストが色違いのコーディネートをタイプ別に見てみましょう。

ネイビーのスーツとグレーのベストを合わせたシックなスタイル

ネイビーのスーツに相性の良い、グレーのベストを合わせたシックな着こなしです。ベーシックな着こなしですが、シャツとネクタイの柄にポイントを置いています。スーツと同じ色のベストのコーディネートと比べると、さりげなくベストを着ている効果が際立っています。ビジネスシーンで、品よく目立ちたい方におすすめのコーディネートです。

ブラウンのチェックジャケットと明るいブラウンのベストを合わせたあたたかみのあるコーデ

ブラウンで統一した、秋らしい遊び心のあるコーディネートです。ベストの明るいトーンが、全体の印象をおしゃれにまとめています。ジャケットネクタイに柄が入っていますが、ブラウン系の色使いを持ってくることで違和感を感じさせていません。ブラウン独特の温かみのある感じが、ウールの素材感ともマッチしています。全体の配色が絶妙に融合した、個性的な印象が素敵です。

ネイビーのスーツにグレーのベストを合わせたフォーマルコーデ

グレーのベストが全体をまとめて、上品な印象のコーディネートになっています。ベストが付いたタイプなので、Vゾーンがより華やかになっています。鮮やかな色合いのジャケットネクタイは、品格のあるデザインのベストにぴったりです。パーティーなどで使いたい着こなしです。

柄物ジャケットダブルボタンベストでクラシカルスタイル

柄物のジャケットダブルボタンベストを合わせて、クラシカルな雰囲気にしています。ブラウン系はグレーやネイビーとも相性がいいので、差し色として持っているとコーディネートの幅が広がります。全体のトーンを落ち着かせて、ネクタイカラーを明るくすると、Vゾーンが華やかに見えておしゃれです。

ロイヤルブルーのスーツとグレーのチェックベストのフォーマルスタイル

濃い鮮やかなロイヤルブルーのスーツを、グレーのチェック柄のベストでグッとクラシックな印象を与える着こなしです。チェックの中に青い線が入っているところも、このコーディネートのポイントです。

柄物を合わせる時は、スーツと同系の色を入れるとまとまりやすくなります。パーティのシーンではとかく華やかになりがちですが、チェックのベストで落ち着きのある雰囲気が出せます。フォーマルな着こなしでも、ベストにポイントを持ってくるとイメージを変えるとができます。

チェックオンチェックのモノトーンコーデ

チェックオンチェックで、上手に柄物のベストを合わせているコーディネートです。大きさの違うチェックを合わせていますが、全体をモノトーンにすることで統一感を出しています。ジャケットとは違う柄のベストを合わせても、色使いがシンプルなのでうるさくなりません。むしろおしゃれに精通した貫録を感じます。柄物のベストのコーディネートは難しいですが、トータルでまとまった印象になるように合わせてみましょう。

スーツ×ベストをオーダーで楽しむ!

思い通りのコーディネートでスーツにベストを合わせるなら、断然オーダースーツがおすすめです。オーダースーツなら一人ひとり採寸しますので、ジャストフィットで仕上げられます。

 既成のスーツは人の身長とウエストから選ばなくてはならないので、体の一番大きい部分に合わせます。そうなると他の部分はゆとりができすぎてしまい、体にフィットせずスーツに着られている感が出てしまいます。スーツに着られている感じが出ないためには、ジャストサイズを選ぶのが一番のポイントです。

自分の体型に合わせられるだけでなく、細かいデザインや素材も自分の好みで選べます。同じネイビーの生地でも光沢感や肌触りに違いがあり、自分の好みで生地から選べるのはオーダーならでは。それにこだわりが詰まったオリジナルのスーツを着て仕事ができるのは、仕事へのやる気にも繋がります。

スーツやベストのスタイルや生地、ボタン裏地等豊富に取り揃えています。自分好みのスタイルを探し回ることなく、思い通りに満足できるものを手に入れてください。スーツとベストで自分だけのコーディネートを楽しめるのは、オーダースーツであるからこそできること。

 ぜひスーツに合わせてコーディネートを楽しめる、オリジナルのオーダーベストを作ってみてください。

「オーダースーツSADA」とは?

最後に「オーダースーツSADA」の紹介を少しだけさせていただきます。はじめてベストを作ろうと思っているあなたへ「オーダースーツSADA」をオススメする理由。それは決してリーズナブルな価格だけではありません。「オーダースーツSADA」のスーツ作りには人間の血が通った「ある思い」があるのです。

「オーダースーツSADA」とはどのようなお店か?

初回お試し価格が19,800円〜(税込み21,700円〜 2023年1月現在)という破格の価格。

ものによってはスーツ量販店の既製品より安く買えてしまうスーツ。この値段だけを見て「格安のスーツ量販店か」と思った方は少しだけお時間をください。

「オーダースーツSADA」はマシンメイドのフルオーダー専門店。創業当時は生地の卸業をしていましたが、しだいに川下へと業務を拡大して今では全国に49店舗(2023年1月現在)を構えるオーダースーツ専門店に成長しました。今年2023年になんと創業100周年を迎える老舗企業。長い歴史の中で培った信頼と実績に裏付けされたたしかな品質を、より多くの方にお届けすべく日夜スーツづくりに励んでいるのです。

「オーダースーツSADA」は、なぜオーダースーツにこだわるのか?

スーツのオーダーの方法は3種類あります。

一つ目はパターンオーダー縫製された状態で店頭に並ぶ既成サンプル(スーツ)があり、微調整によってのみ体への合わせ込みをします。微調整できるのはジャケットであれば着丈丈、スラックスであればウエストや裾丈などごく一部に限られます。

生産ラインに流せるのでオーダースーツの中では最も価格が安く、最も納期が短いのが特徴。また、仕上がりをイメージしやすいのもパターンオーダーのいいところでしょう。しかし、前述の通り調整できる部分が限られているので、既製品に近いオーダースーツと捉えましょう。

二つ目はイージーオーダーイージーオーダーは既製の型紙の中から体に合うものを選んで縫製するもの。パターンオーダーとは異なり、まだ縫製していないため調整できる部分が多くなります。肩周りや胸周りも調整可能なので、なで肩やいかり肩といった特徴的な肩の状にもフィットさせられます。

オーダースーツの中では比較的価格が安いにもかかわらず、調整できる部分が多いのがイージーオーダー。しかし、型紙は既成のものを使うので「世界にあなただけの一着」というわけにはいきません。

三つ目はフルオーダーフルオーダーのスーツ作りはあなたの体を採寸するところからはじまります。採寸データをもとに型紙を起こし、その型紙を使った「世界にあなただけの一着」を作るのです。寸法だけでなく、デザインや生地など細かい部分にまでこだわるのがフルオーダーの醍醐味。ベストはとくに体にピッタリと合わせるもの。ベストを作るなら断然フルオーダーがオススメです。

しかし、そのようなフルオーダーにも唯一のデメリットが。それは価格が高い傾向にあることです。一般的なフルオーダーの価格は20万円以上。ものによっては100万円を超えることもあります。なかなか庶民が着られるものではありません……。

少し話を変えます。スーツをカッコよく着こなすために一番大切なことは何でしょうか?

高価な生地を選ぶこと?流行りのスタイリッシュなデザインを選ぶこと?

いいえ、どちらでもありません。

スーツをカッコよく着こなすために一番大切なことは、自分の体にフィットしたスーツを着ることです。大きすぎると野暮ったく見えてしまい、小さすぎるとパツパツになって窮屈になります。

スーツはサイズ感がいのち。

スーツのサイズが体に合っていないと、どれだけ高級な生地を使ってもどれだけスタイリッシュなデザインでも台無しになってしまいます。

それでは体にピッタリと合ったスーツを作るベストな方法は何でしょうか?それはフルオーダーのスーツを作ることです。

フルオーダーのスーツは高価。しかし、体にピッタリとフィットするのはフルオーダーのスーツ。そこで「オーダースーツSADA」は考えました。より多くの人がオーダースーツを着られる方法を。

「オーダースーツSADA」は、どのようにしてオーダースーツを作るのか?

ここでは「オーダースーツSADA」がリーズナブルにフルオーダーのスーツを作る秘密に迫ります。

フルオーダースーツ作りに欠かせない最初の工程は採寸。「オーダースーツSADA」では専門的な訓練を受けたスタイリストが、30分という時間をかけてあなたの体を採寸します。採寸する場所は実に15か所以上。ただ、採寸するだけでなくタイトにする部分や余裕をもたせる部分をリクエストすることも可能。わからないことがあればスタイリストが相談に乗ってくれます。

「オーダースーツSADA」がスーツ作りの中で一番大切にしているのが採寸詳細は後述しますが、「オーダースーツSADA」のフルオーダースーツはマシンメイド。採寸やあなたの要望を聞いて決めた寸法に間違いがあると、その後修正できないためです。

採寸が終わったら次はオリジナルパターン(型紙に相当)の設計です。設計はCADという設計ソフトを使って自動で行います。通常であれば職人が手間暇をかけて行う作業を設計ソフトが自動で行うのです。

次の工程である生地の裁断も自動で行います。CADによって設計されたオリジナルパターンのデータをCAMというソフトに読み込ませることで、自動で生地を裁断するのです。この作業も職人に代わって機械が行います。その後縫製ラインへ流すことで徹底的に効率よくスーツを生産するのです。

この徹底した効率化が「オーダースーツSADA」の驚く価格の秘密です。また、生地の仕入れから販売まで一貫して行うため、中間マージンが発生しないことも価格をリーズナブルにおさえる秘密。「オーダースーツSADA」はより多くの人にオーダースーツを着てもらうため、価格に対する努力を惜しまないのです。

「オーダースーツSADA」でスーツを作るには?

それではオーダースーツを作るには、何をすればいいのでしょうか?

まずは最寄りのお店に行ってみましょう。空いていれば予約なしでも対応可能ですが、ご予約いただいた方がお待たせすることなく対応できます。

まずは相談だけでも構いません。Web予約するとき、予約フォームに「スーツの相談がしたい」旨を記載していただくとスムーズです。

スーツは体にピッタリ合うからこそ、その魅力を発揮するもの。胴着であるベストならなおのことです。今まで既製品のスーツしか着たことのないあなたも、オーダースーツは気になっていても敷居が高くてお店に入れなかったあなたも、今年はオーダースーツデビューしてみませんか?

「オーダースーツSADA」はオーダースーツ作りを通して、大きく飛躍するあなたを応援します。

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この記事ではスーツのベストについて解説いたしました。簡単におさらいしてみましょう。
ベストは襟の有無、そしてボタン配列(シングル or ダブル)により4種類に分類されます。襟がないものはふくよかな体型の方に似合い、襟があるものは細身の方に似合います。また、ボタンはダブルの方がよりクラシカルなデザインです。次はベストに使われる生地について学びました。ベストは表と背面で使われる生地が違うもの。表はスーツの表地と同じ生地、背面はスーツの裏地と同じ生地が使われます。表地に使われるのはウール、カシミア、モヘア、コットンなどの天然素材がメイン。裏地に使われるのはキュプラと呼ばれるコットン由来の素材がメインです。ベストにはさまざまな素材のボタンが使われます。水牛、ナット、シェルなど天然素材のボタンは、世界に二つとないあなただけのボタンです。そのような天然素材のボタンを機能面と価格面で補完するのがポリエステルなどの樹脂製ボタンです。最後にはコーディネート例を紹介いたしました。ビジネスでよく使う色はネイビーやグレー。引き締める色と開放感のある色でメリハリをつければ、カッコいいコーデの完成です。これであなたも自信を持ってベストを選べるでしょう。

大久保 一雄